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人種差別によるチーム名変更に疑義を呈する米大統領と的確な現状認識を示したインディアンズ監督

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
インディアンズの名称変更に理解を示したテリー・フランコナ監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【名称変更の検討を明らかにした2チーム】

 ミネソタ州で起こった白人警察官による黒人男性暴行死事件に端を発し、現在も米国内で激しい反人種差別運動が展開される中、NFLのレッドスキンズとMLBのインディアンズが相次いでチームの名称変更を検討していることを明らかにしている。

 両チームともにそれぞれのリーグの古参チームで、レッドスキンズは1933年から、インディアンズに至っては1915年から使用され、ファンに親しまれてきた愛称だ。

 その一方で今回に限らず、米国内で人種差別問題が起こる度に、これら2チームの名称が問題視されてきた過去があるのも事実だ。

【名称変更に疑義を呈したトランプ大統領】

 そんな中、2チームの名称変更の動きに疑義を呈した人物が現れた。誰あろう、ドナルド・トランプ大統領だ。

 同大統領は現地時間の7月6日、ツイッター上に以下のようなメッセージを投稿している。

 「人々は弱さではなく、強さを象徴するためにチームの名称を考える。しかし現在、クリーブランド・インディアンズとワシントン・レッドスキンズの伝統的なスポーツチームが政治的な修正を求められ、チームの名称を変更しようとしている。エリザベス・ウォーレン(民主党上院議員、先住民の血を引いている)のようなインディアンズは怒っているにちがいない」

 最後の部分はやや皮肉を込めた内容ではあるが、トランプ大統領が伝統あるチーム名を変更することに疑問を感じているのは間違いないだろう。

【インディアンズ監督の現状認識】

 これまでもトランプ大統領は、人種差別に抗議するため国歌斉唱時に片膝をつく行為を行うアスリートたち対し「国旗、国歌を侮辱する行為だ」と批難し、リーグや選手たちの間で大論争を巻き起こしてきた過去がある。

 その際も、そして今回も、トランプ大統領の主張は間違ったものではないし、彼を支持する人たちは少なくない。だがその一方で、多くの批判を浴びてきたのも紛れもない事実だ。

 そんな状況下で、7月5日のオンライン会見において、チームの名称変更について尋ねられたインディアンズのテリー・フランコナ監督の答えが、米国の現状を的確に表しているような気がしてならない。

 「過去に同様の質問をされ、当時はチーム名やチーフワフー(2017年まで使用されてきたチームロゴの名称)について、(先住民を)蔑視するような意図はまったくないと答えてきた。

 その考えは今も変わっていないが、ただ今日に至っては、それが十分な答えだとは思っていない。今は前に進むべき時であり、これを難しく、繊細な問題と論じるだけでは片づけられなくなっている。

 自分のような年齢になっても、年齢を重ねたからといって学とことを止めたくはないし、自分も積極的に取り組んでいくべきだと思っている。自分はクリス(・アントネッティ球団社長)と長年にわたり話し合いミーティングも開いてきたし、できうる限り(人々から)話を聞くようにしてきた。今必要なのは、自分の意見を話すよりも、人から話を聞くことではないか」

 フランコナ監督が指摘するように、今や過去の正論が通用しない時代になっているのが現在の米国なのだろう。今回の反人種差別運動を機に、米国スポーツ界は大きな変革期を迎えているのかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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