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ダルビッシュ有が発したYouTube上の「僕は立ち上がりが悪くない」発言をデータ調査してみたら…

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2019年シーズンは明らかに立ち上がりが安定していたダルビッシュ有投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ダルビッシュ投手開設のゲーム用YouTubeチャンネル】

 プロ野球のシーズン開幕戦が6月19日に決まり、ようやくファンも来月から試合観戦という楽しみを取り戻すことができる。

 これまで緊急事態宣言が発令され、国中が自粛ムードに包まれる中、なかなか野球を楽しめる環境ではなかった。それでもネット上で、野球を通じたエンターテインメントを提供し続けてくれた人物がいる。

 ダルビッシュ有投手だ。

 彼はYouTubeにメインチャンネルの他にサブチャンネルを開設していたのだが、このサブチャンネルを「ダルビッシュのゲームチャンネル」と改名し、ひたすらKONAMI社製の携帯アプリ『プロ野球スピリッツA(通称プロスピA)』をプレーする動画を公開し続けているのだ。

 いわゆるゲーム動画の1つではあるのだが、そんな単純なものではない、かくいう自分も、ほぼ毎日公開される動画を楽しみにしているファンの1人だ。

 プレー中は、登場してくる選手たちにまつわるエピソードを披露してくれるし、プレーごとに彼が感じた名解説をどんどん挟んでくれ、まさに極上の野球観戦として動画を楽しむことができる。

 つい先日KONAMI社とコラボ企画を実施したこともあり、同チャンネルの登録者数は26.7万人(5月26日現在)を数え、公開される動画は常に20~40万人が視聴している状況だ。

【自分と対戦して漏らした一言】

 5月26日に公開された動画も、楽しく視聴させてもらった。

 この日は対戦者がダルビッシュ投手を先発投手に起用してきたため、夢の“ダルビッシュ対ダルビッシュ”が実現した。結果はダルビッシュ投手が、対戦者が操作する“ゲーム上”のダルビッシュ投手を攻略し見事に勝利を飾っている。

 1回裏に(ダルビッシュ投手が操作する)柳田悠岐選手が3点本塁打を放った後、失点された“ゲーム上”のダルビッシュ投手に対し、ダルビッシュ投手が放った一言がなかなか秀逸だった。

 「言ったでしょ。ダメなんですよ、このピッチャーは。立ち上がりが悪い」

 さらに以下のように続けた。

 「立ち上がりが悪いです…。でも結構僕、立ち上がりが悪いというイメージがあると思うんです。でもね、そんなことはないです。意外と初回の数字はいいっす」

【MLBでのイニング別防御率を完全比較】

 このダルビッシュ投手の一言が非常に気になってしまい、早速データを調べてみることにした。

 下の表を見てほしい。2012年から2019年までのイニングごとの防御率をまとめたものだ。2015年はトミージョン手術のため公式戦登板がないので省略している。「n/a」と表示されているのは、そのシーズンはそのイニングまで到達することがなかったことを意味している。

 ちなみにダルビッシュ投手のMLBでの通算防御率は3.57なので、それより高い数値はすべて赤で表示している。

(筆者作成)
(筆者作成)

 如何だろう。こうして比較をしてみると、確かに2013年と2018年は他のイニング以上に1回に失点される傾向が強い気がするが、逆に2014年と2019年はむしろ1回の方が他のイニングより失点が少なくなっているのが理解できる。

 このデータからも、ダルビッシュ投手はすべてのシーズンにおいて立ち上がりが悪いという傾向を示しているわけではなく、むしろ立ち上がりが良かったシーズンがあるということが明確になった。

 つまり彼の発言は正しかったのだ。

【引き続き動画公開に期待】

 ということで、いろいろな意味で楽しませてもらっているダルビッシュ投手のYouTubeチャンネルだが、現在はMLBもシーズン開幕の方向で動き出しており、今後は動画公開を継続するのが難しくなっていくだろう。

 ただ前述したように、現在は自分を含め彼の動画を楽しみに待っているファンが少なからず存在している。もう少しの間でいいので、無理が生じない範囲で動画公開を期待したい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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