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危機的状況のマイナーリーグ! ツインズ傘下2Aチームが本拠地球場を民泊施設として一般開放

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
民泊予約サイトに登録されたブルーワフーズ・スタジアム(「Airbnb」より)

【マイナー球場が民泊予約サイトに登録】

 ESPNが現地時間の5月23日に報じたところによれば、ツインズ傘下のマイナーリーグチームが本拠地球場を民泊施設として一般に開放しているという。

 このチームは2Aのサザンリーグに所属し、フロリダ州ペンサコーラを本拠地にする「ペンサコーラ・ブルーワフーズ」。同チームの本拠地球場「ブルーワフーズ・スタジアム」を世界展開している民泊予約サイトの「Airbnb」に登録し、民泊施設として一般に開放している。

 同サイトにプロ野球チームの球場が登録されるのは、初めてのことだという。

【最大10名が球場内施設を使い放題】

 同サイトに掲載されている宿泊情報によれば、料金は1泊1500ドル(16万1454円)で、最大10名まで宿泊できる。

 改装したばかりのクラブハウスを寝室として使用し、10台のベッドが用意されている。またクラブハウス以外にも、室内打撃ケージやグラウンドも使い放題になっており、野球ファンにとっては最高の環境を体験することができる。

 また宿泊情報では、グラウンドは野球だけではなく外野の芝エリアでピクニックとして活用することも提案されており、利用者は球場を思い通りにフル活用できるようだ。

 フロリダ州最西端に位置するペンサコーラは、メキシコ湾岸沿いの美しいビーチリゾートとして米国民にも人気の観光地で、今後利用者が現れる可能性が高そうだ。

【危機的状況のマイナーリーグ】

 ブルーワフーズが本拠地球場を民泊施設として開放することになったのは、いうまでもなく新型コロナウイルスによる影響だ。

 現在MLBと選手会の間で、シーズン開幕に向けて協議が続いている最中だが、彼らの話し合いはあくまでメジャーのみで、マイナーリーグは対象外だ。まだメジャーすらシーズン開幕の具体策が決まっていない中で、マイナーリーグのシーズン実施はまったく先が見えない状況に置かれている。

 またメディア報道によれば、MLBは今シーズンの特別措置として、出場ルースター30人に加え、予備ロースター20人で公式戦を戦うことを検討しているようだ。これが採用された場合、通常シーズンより24人の選手(メジャーの出場ロースターは26人)がメジャーに奪われてしまい、マイナーリーグが手薄になってしまう可能性があるため、まずますシーズン実施が困難になってくる。

 つまりシーズンが実施できないブルーワフーズは、ずっと収入源を奪われている状態が続いているのだ。

【メジャーからの資金援助はなく独立採算制】

 今回のブルーワフーズに限らず、マイナーリーグのほぼ全チームが新型コロナウイルスのため厳しい状況に置かれている。

 というのも、マイナー各チームは単にMLBチームと提携契約を結んでいるだけで、独立採算制で運営されている。頻繁に傘下チームが入れ替わるのはそのためだ。

 選手はあくまでMLBチームから借り受けているかたちなので、マイナーリーグチームに支払い義務はない。だが経営は独立採算制なので、こうした緊急事態でもMLBチームからの資金援助はないし、球団スタッフの支払いは各チームで収入を確保しなければならない、

 ある3Aチームのケースだが、3月にシーズン中断が決まった時点で大幅な予算カットを決定。例年シーズン中に雇い入れる臨時スタッフの採用を止め、さらにすでに球団スタッフとして働いていたインターンを含めた非正規雇用者をすべて解雇している。

 現在は先の見えない中、最少人数のスタッフが昼夜兼行でシーズンの準備をしている状況だ。これは多くのマイナーリーグチームが直面している現状だと考えていい。

 今後もブルーワフーズに限らず、臨時収入を得ようとするマイナーリーグチームが現れることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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