Yahoo!ニュース

日本人選手にとって居心地のいいチームはマリナーズ! その反対に苦労するのはメッツ?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
イチロー選手をはじめ計23シーズンにわたり日本人選手がマリナーズに在籍してきた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB全30チームを制覇した日本人選手】

 すでにご承知の方も多いことと思うが、今シーズン秋山翔吾選手がレッズ入りししたことで、日本人選手が在籍したチーム数が30に達し、MLB全チームを完全制覇することになった。

 秋山選手のレッズ入りを報じる米メディアが出現した当時、本欄でもその事実を報告するともに、各チームに最初に在籍した日本人選手を紹介させてもらっている。

 そこで今回は、もう少し細かく日本人選手とMLB各チームの関係を考察してみたいと思う。

【日本人選手最多在籍チームはメッツ】

 1964年に日本人初のメジャー選手になった村上雅則投手はあくまでホークスからの野球留学の身分だったこともあり、本格的な日本人選手のMLB挑戦といえば、1995年にドジャース入りした野茂英雄投手ということになるだろう。

 それ以降、2019年シーズンまで計56人の日本人選手メジャーの公式選手に出場を果たしている。そして彼らはこれまで計29チームに在籍してきたわけだが、ドジャースやヤンキースなどの人気チームは別として、日本人選手が在籍することで、日本で認知されるようになったチームも少なくないだろう。

 とりあえず村上投手を加えた57選手がこれまで所属してきた29チームの中で、在籍人数が多かった上位3チームを挙げてみよう。

 1位 メッツ(14人):柏田貴史(1997)、吉井理人(1998~1999)、野茂英雄(1998)、マック鈴木(1999)、新庄剛志(2001、2003)、小宮山悟(2002)、松井稼頭央(2004~2006)、石井一久(2005)、高津臣吾(2005)、高橋健(2009)、五十嵐亮太(2010~2011)、高橋尚成(2010)、松坂大輔(2013~2014)、青木宣親(2017)

 2位 マリナーズ(10人):マック鈴木(1996、1998~1999)、佐々木主浩(2000~2003)、イチロー(2001~2012、2018~2019)、長谷川滋利(2002~2005)、木田優夫(2004~2005)、城島健司(2006~2009)、岩隈久志(2012~2017)、川崎宗則(2012)、青木宣親(2016)、菊池雄星(2019~)

 3位 ドジャース(8人):野茂英雄(1995~1998、2002~2004)、石井一久(2002~2004)、木田優夫(2003~2004)、中村紀洋(2005)、齋藤隆(2006~2008)、黒田博樹(2008~2011)、前田健太(2016~20219)、ダルビッシュ有(2017)

 3位 カブス(8人):福留孝介(2008~2011)、田口壮(2009)、藤川球児(2013~2014)、高橋尚成(2013)、和田毅(2014~2015)、川崎宗則(2016)、上原浩治(2017)、ダルビッシュ有(2018~)

 3位以下は、レッドソックス、ヤンキース、レンジャーズの7人が続いている。反対に在籍数が少なかったのは、ツインズ(西岡剛選手)とカージナルス(田口選手)の1人。だが今シーズン前田投手がツインズに加入しているのは、ご承知の通りだ。

 ちなみにメッツに名前が入っているマック鈴木投手は、1999年にマリナーズからトレードされた後すぐにウェーバーにかけられロイヤルズに移籍しており、メッツでの公式戦出場はない。だが一瞬でも25人の出場ロースターに入ったので加えることにした。

【日本人の在籍シーズンではマリナーズがダントツ1位】

 ところが在籍人数ではなく、各チームの日本人選手が在籍していたシーズン数で見ると、かなり順位が入れ替わる。

 1位 マリナーズ(23シーズン):マック鈴木投手がデビューした1996年以降1997年を除くすべてのシーズン

 2位 ヤンキース(18シーズン):伊良部秀輝投手がデビューした1997年以降、2000~2002、2010~2011年を除くすべてのシーズン

 2位 ドジャース(18シーズン):野茂英雄投手がデビューした1995年以降、1999~2001、2012~2015年を除くすべてのシーズン

 ちなみに4位はレッドソックスの15シーズン。在籍人数1位だったメッツは5位の14シーズンまで下がっている。

【メッツは日本人選手が長期的に在籍するのが難しい?】

 マリナーズが在籍シーズン数でダントツ1位なっているのは、イチロー選手の賜物であるのは否定しない。だがそれ以外の選手でも、川崎選手と青木選手以外はすべて複数シーズン在籍している。

 一方で在籍人数ではトップだったメッツの場合、逆に1シーズン(シーズン途中の移籍も含め)だけしか在籍していない選手が9人も存在している。

 ニューヨークはメディア、ファンともに辛辣で、活躍できない選手は批判を浴びるなど、選手が長年にわたって支持されるのは難しいとされる。だがヤンキースに在籍してきた日本人選手7人中6人が複数シーズン在籍しており、やはり街事情というよりもチームの編成方針が大きく影響しているようだ。

 いずれにせよ、マリナーズが日本人選手にとってMLB屈指の居心地のいいチームであることは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事