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ハンナリーズのラッキーボーイになりつつある現役大学生・寺嶋良 本人すらも予想しなかった鮮烈デビュー

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ハンナリーズにスピードをもたらした新加入の寺嶋良選手(左・筆者撮影)

【13連敗を抜け出したハンナリーズが6連勝】

 Bリーグの京都ハンナリーズが、1月22日のシーズン第18節で同じ西地区で首位タイを走っていた琉球ゴールデンキングスを本拠地に向かえ、92対78で勝利した。

 ハンナリーズといえば、シーズン前のアーリーカップ関西大会で優勝を飾り、シーズン開幕後も6連勝と順調なスタートを切っていた。今シーズンは松井啓十郎選手、中村太地選手らの加入で、リーグ屈指の長身ラインナップを揃え、西地区の優勝候補にも挙げられる存在になっていた。

 ところが11月9日の秋田ノーザンハピネッツ戦での敗戦を機にそこから泥沼の13連敗を喫し、一気に下位に転落。そこから12月29日の三遠ネオフェニックス戦で連敗に終止符を打ち、この日のキングス戦勝利で6連勝を飾るなど、ようやく復調の兆しを見せ始めている。

 まるでジェットコースターのようなここまでの戦いぶりは、浜口炎HCにとっても想定外だったようだ。

 「プレシーズンも良くて、いいかたちで(シーズンの)スタートを切れて、ビッグラインナップでいろんなことができるようになってきてました。

 千葉(ジェッツ)戦でマブンガがケガをして、(試合が)始まってすぐにけがをしたのに最後まで使ってしまって、その辺りでけが人も増えて、サイモンもケガをして…。そこから(彼らが)戻ってきてもなかなかリズムが噛み合わなかった状況が続いてしまったという感じです。

 正直ここまで(連敗が)長くなるとは思っていなかったです」

【連敗脱出からチームに加入した新戦力】

 ようやく上位進出を狙えるチーム状況になった現在のハンナリーズだが、実はチームが連敗を阻止したネオフェニックス戦でプロデビューを飾り、この6連勝中も活躍を続けている新加入選手がいる。

 ハンナリーズにとってすっかりラッキーボーイともいえる存在になっているのが、東海大4年の現役大学生選手、寺嶋良選手だ。

 デビュー戦となったネオフェニックス戦第1試合と翌日の第2試合は、それぞれ1分未満の出場時間に留まったが、年明け最初の試合となった名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦第1試合でいきなり20分20秒の出場時間を与えられると、それ以降は完全にローテーションの一角を担い、チームの勝利に貢献している。

 今回のキングス戦でも岸本隆一選手、並里成選手のリーグを代表するPGとほぼ対等に渡り合い、31分14秒の出場で9得点、4リバウンド、2アシスト、1スティールの活躍をみせている。

 浜口HCも寺嶋選手の鮮烈デビューに「驚きの収穫です」と脱帽している。

【自分自身のデビューを「こんなはずじゃなかった」】

 だが浜口HC以上にここまでの活躍を一番驚いているのは、当の寺嶋選手自身なのだ。ここまでのプレーを以下のように振り返っている。

 「思っていた以上に試合に出る機会というか、出場する時間をもらっているので、その分期待に応えられるように頑張っていて…。前回の2試合では勝つための(重要な)後半だったり苦しい場面でしっかり自分のプレーで得点がとれたりしたので、それは良かったなと思います。

 まだ(デビューして)6試合目なんですけど、僕が描いていたデビューの道のりとは(違って)飛び抜けて良いというか、こんなはずじゃなかったという感じですね(笑)。自分でも驚いている感じです」

【最大の武器は強靱な肉体から繰り出すスピードとボール運び】

 改めて浜口HCに寺嶋選手のプレーを分析してもらった。

 「身体が強いというのと足が動くというのが1つですね。ディフェンスはできると思っていたので、その部分はある程度計算できるかなと思っていました。

 あとうちのプラスになったのがボール運びのスピードの部分です。そこがうちのチームが一番苦しんでいた部分なので、そこを彼が改善してくれているんじゃないかなと思います」

 浜口HCが指摘しているように、これまでは村上直選手が控えPGとしてスピードをもたらすだけで、あとは長身のジュリアン・マブンガ選手と中村選手がボール運びを担ってきた。そこに寺嶋選手が加わったことで、新たにスピード感溢れる攻撃ができるようになった。

【Bリーグに加わり新しい発見の日々】

 だからと言って寺嶋選手がこの6試合で、Bリーグでやれるという明確な自信を得たわけではない。とにかく今は、コート上で無我夢中のプレーを続けているだけだ。だが勝利に繋がる好プレーを続ける中で、少しずつではあるが自信を積み重ねていっている。

 「まだ自信がないので…。初めて13点とった試合(1月5日のDドルフィンズ戦)があって、その次の試合はとれて2点くらいだろうなと思っていたら16点とれたり、今日(キングス戦)はさすがに無理だろうと思ったら9点とれて…(笑)。少しずつ自信に繋がっているのかなと思います。

 しっかり長い時間使ってもらえるので、自分としてもこんなプレーができるんだとか、Bリーグでも通用する部分だとか、長所、短所が1試合ずつ判明していくというか、発見できているので、それはいいことだなと思います」

 今回のキングス戦でも岸本選手や並里選手を「TVで見てきた存在」と話し、正直ビビっていたと本音を漏らす。もちろん現在の寺嶋選手が彼らに肩を並べているわけではないし、彼らのレベルに到達するにはまだまだ長い年月と経験が必要だ。

 だが現在の寺嶋選手の溌剌としたプレーが、着実にハンナリーズに好影響をもたらしているのも事実だ。果たして彼の勢いはどこまで続くのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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