地区首位タイに立つ好調大阪エヴェッサを裏で支える選手目線に徹する新人コーチの存在

大阪エヴェッサのコーチ陣に加わったルーベン・ボイキンAC(筆者撮影)

【シーズン序盤戦を終え地区首位タイに立つエヴェッサ】

 天皇杯・皇后杯全日本バスケットボール選手権大会の2次ラウンドが実施されるなどして、2週間のバイウィーク(休養ウィーク)を挟んだBリーグ。いよいよ今週末からシーズンが再開される。

 約2ヶ月間のシーズン序盤戦を終え、東、中、西地区ともに昨シーズンとはやや違った順位展開を見せているが、中でも健闘ぶりが光るのが大阪エヴェッサではないだろうか。

 過去3シーズンは一度も勝ち越ししたことがないエヴェッサが、一時は西地区で単独首位に立つなどして、現在も琉球ゴールデンキングスとともに10勝5敗で首位に立っている。

【選手たちが口を揃える選手たちを支える存在】

 今シーズンのエヴェッサは、bjリーグ時代に5シーズンにわたり指揮をとった天日謙作HCが10年ぶりに復帰し、昨シーズンから6人の選手を入れ替え、同HCが標榜する、速い展開から選手皆がボールを共有してフリーになった選手にシュートを打たせるスタイルを徹底している。

 さらにチームの主力だったジョシュ・ハレルソン選手に加え、帰化選手のアイラ・ブラウン選手、リチャード・ヘンドリクソン選手、ショーン・オマラ選手の2人の外国籍選手が加入し、ローテーションを組みながら多くの時間帯で「オン・ザ・コート3(帰化選手1人+2人の外国籍選手を同時にコートに立たせること)」を展開できるようになったのも大きい。

 これ以外にもエヴェッサ好調の理由はいろいろ考えられると思うが、個人的にシーズン開幕当初からエヴェッサの取材を続けていて、数人の選手たちから話を聞いてずっと気になっている人物が存在していた。

 「このオフはずっとルーベンが付き添ってくれ、しっかりシュート練習を続けることができた」(ブラウン選手)

 「まだプロ経験が浅く、初めてBリーグ入りした自分に対し、ルーベンはいつも声をかけてくれ、自分のやるべきことを明確にしてくれる」(オマラ選手)

【天日HCも絶賛する新人米国人AC】

 この「ルーベン」という人物こそ、今シーズンからエヴェッサのコート陣に加わったルーベン・ボイキンACだ。昨シーズンまで日本で現役を続けていた新米コーチながら、選手のみならず天日HCからも絶大な信頼を得ている。

 「彼(ボイキンAC)の加入がむちゃくちゃ(チームにとって)大きくて、僕は1人でやるんじゃなくてアイディアがすごく欲しい人なんです。彼と竹野(明倫AC)はこうしたらいいんちゃうんとか、こうやってやろうよとか、どんどん出してくれます。

 それでアメリカ人に説明するのは、お前がやれっていうことですよね。僕の下手くそな英語でやるより、彼の方が伝わるのだからやってくれということで…。その方がアメリカ人には言葉が入りやすいと思うんですよね。

 アイラもそうですが、ルーベンも4、5年くらい日本でプレーしてますよね。日本のスポーツ文化も分かっているので、すごく僕らの力になっていると思います」

【選手目線でコーチにして欲しいことを考える】

 当のボイキンACは「毎日勉強の日々だ」と話し、まだまだコーチとして修業の毎日を過ごしている。その中で日々選手と接しながら、心がけていることがあるという。

 「自分が選手としてACから何をして欲しいかを考えるようにしている。HCはどうしても選手たちにこうして欲しいと求めてしまう。だから自分はACとして、もう少しシュートを改善したいとか、試合の状況に応じてもっといいプレーをしたいとか、いろいろ考えている選手たちの手伝いをしたいと思っている。

 自分は選手の成長を見届けるのが好きだ。自分の兄弟は現在レイカーズで働いており、彼からレイカーズが選手を成長させるためにどんな取り組みをしているのかも聞いている。自分もここで同じようなことをやっていきたい」

【AC就任前は多少の不安も】

 実は現役引退をして米国で新たな生活をスタートさせていたボイキンACは、エヴェッサからのオファーに多少の不安も感じていたという。

 「実は日本に行くことに不安を感じていた。というのも選手として多くのコーチたちを見てきて、コーチというのがどういうものなのかも理解しているつもりだ、中にはとんでもないHCもいたからね。

 でも実際チームに加わってみると、天日HCは自分が心配していたようなコーチとはまったく違っていた。今は想像以上に素晴らしく、毎日が充実している。自分に機会を与えてくれたチームに心から感謝している」

 そして現在のボイキンACは理想のコーチ像に迫るべく、日々選手たちと接し続けている。

 「選手とコミュニケーションを続けながら、選手に自信を植え付け、選手たちを信頼すること。それがコーチとして最も大きなことだと思っている」

 残りシーズンもエヴェッサは躍進を続けられるのか。ボイキンACのサポートも大きなカギを握っていそうだ。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

有料ニュースの定期購読

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシーサンプル記事
月額550円(初月無料)
月3、4回程度
22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。