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対レッドソックス戦防御率40.50! 田中将大は完全攻略されているのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
25日のレッドソックス戦で12失点を許し今シーズン6敗目を喫した田中将大投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ヤンキース史上96年ぶりの不名誉記録】

 ヤンキースの田中将大投手が25日のレッドソックス戦に先発し、4回途中で12安打12失点される乱調で、今シーズン6敗目を喫した。

 12失点は田中投手にとってMLB6年目で自己最多。また12失点すべてが自責点となり、ESPNによれば、公式記録に自責点が採用された1913年以来、レッドソックス戦でヤンキースの投手が記録した史上最多の自責点になったということだ。

 さらに12自責点はヤンキース史上でも、1923年7月17日のインディアンズ戦で13自責点を記録した、カール・メイズ投手に次ぐ不名誉記録らしい。

【対レッドソックス戦防御率は40.50】

 今シーズンの田中投手は、明らかにレッドソックス戦で苦戦している。

今回がレッドソックス戦2回目の登板だったが、MLB史上初のロンドン開催となった7月29日の登板でも、今回同様に初回から猛攻を浴び、4安打6失点(6自責点)でわずか2アウトを奪っただけで降板している。

 この結果、対レッドソックス戦2試合の防御率は40.50にまで跳ね上がっている。一方で、残り19試合の防御率は3.56と、むしろMLBの中でもトップクラスの好成績(3.56ならMLB全体で25位に相当)を残しているのだ。

 どう見てもギャップが大きすぎる…。

【レッドソックスが田中を完全攻略?】

 サンケイスポーツの電子版で報じられている、試合後の田中投手のコメントを見ると、本人も間違いなく違和感を抱いているのが感じ取れる。

 「投げている球と、僕の出来自体はそこまで悪いものだったとは思わない。(相手が)何か対策を練ってきているのだろうなというのは感じる」

 すでにMLBでは、各チームともに大量のデータを集積し、それを解析する専門チームを抱えている。今ではベンチでのタブレットや腕時計型コンピュータも使用が禁止されているほど、各チームの情報戦は相当に熾烈なものになっている。

 田中投手が指摘するように、レッドソックスがすでに田中投手を完全攻略していても、何ら不思議ではない。

【2017ワールドシリーズでもダルビッシュが丸裸に】

 2017年のワールドシリーズでも、熾烈な情報戦が繰り広げられたのは記憶に新しいところだ。

 シーズン途中に戦力補強としてドジャースにトレードされたダルビッシュ有投手が、地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズで期待通りの好投を演じ、ワールドシリーズでも堂々の先発ローテーション入りを果たした。

 だが満を持して登板した第3戦で、6安打4失点許し2回途中で降板し敗戦投手になると、天下分け目の第7戦でも、3安打5失点(4自責点)で同じく2回途中で降板してしまい、ドジャースはワールドシリーズ制覇を果たすことができなかった。

 一時は前シリーズまでとはまったく違う投球内容に、ダルビッシュ投手への風当たりが強くなったりもしたが、ワールドシリーズ終了後にアストロズ選手が、彼らはダルビッシュ投手のクセを見抜き、事前に球種を把握していたことを証言し、すでに彼が完全攻略されていたことが明らかになっている。

【短期間で打開策を講じることができるか?】

 現時点でレッドソックスが、本当に田中投手を完全攻略できているのかは定かではない。もちろんシーズン途中のこの時期に、彼らがその事実を認めることも絶対にないだろう。

 まだヤンキースは残りシーズンでレッドソックス戦を2カード計7試合残しており、田中投手の登板機会もありそうな状況だ。果たしてヤンキースと田中投手は、短期間で打開策を見出すことができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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