記録上は2人…それでも誰もが“3人”だと信じるエンゼルスが達成した継投ノーヒットノーラン

エンゼルス選手たちは試合終了後マウンドに自分たちの着用ユニフォームを捧げた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB史上13度目の継投ノーヒットノーラン】

 シーズン後半戦が開幕した12日のエンゼルス対マリナーズ戦。

13-0とエンゼルスのワンサイドゲームになり、試合終了まであとアウト1つ。最後の打者がセカンドゴロに倒れると、フェリックス・ペーニャ投手とダスティン・ガーノー捕手がマウンド上で抱き合った。ノーヒットノーランが生まれた瞬間だった。

 この日はテイラー・コール投手が先発し2回を無安打に抑えると、3回から登板したペーニャ投手が1四球だけに抑え、MLB史上13度目の継投によるノーヒットノーランを達成した。エンゼルスとしても7年ぶりチーム史上11度目の快挙だった。

 もちろん記録上は、2投手によるノーヒットノーラン達成だ。だがエンゼルスのみならず、スタジアムに集まったファンのすべてが、もう1人の選手がこの記録に携わったと信じていた。記録達成の瞬間、総立ちで喜ぶ観客席のあちこちで「45」のプラカードが揺れた。

 そして試合後のブラッド・オースマス監督も、以下のように話している。

 「MLBのグラウンドに25年立ち続けてきた中で、今日の試合は最も特別な瞬間の1つだった。試合の始まりから、ノーヒットノーランで締めくくるなんて…。ノーヒットノーランはスカッギーも加わっているような感覚だ」

【急逝したスカッグスの追悼試合】

 オースマス監督のいう「スカッギー」とは、7月1日に急逝したタイラー・スカッグス投手のことだ。この日は彼が亡くなってから、最初のホーム試合だったこともあり、スカッグス投手の追悼試合として開催されていた。

 エンゼルススタジアムのフェンスにはスカッグス投手の遺影が飾られ、試合前には追悼セレモニーが行われ、スカッグス投手の母親デビーさんが始球式を務めた。そしてチーム全員がスカッグス投手のユニフォームを着用し、試合に臨んだ。

 そんなチームの思いは、試合開始から爆発した。初回にマイク・トラウト選手の先制2ラン本塁打などで一挙7点を奪い試合の流れを掴むと、その後もマリナーズ投手陣に襲いかかり、13安打13得点を奪う。さらにワンサイドゲームになってもペーニャ投手は最後まで集中力を切らすことなく、コール投手の無安打を引き継いだ。

 スカッグス投手に捧げられた試合は、チーム全員の力で見事に完璧な勝利に仕立て上げられた。

【試合後はマウンドにユニフォームを捧げる】

 スカッグス投手の追悼は、勝利だけで終わらなかった。チーム全員で勝利を分かち合った後、それぞれが「45」が刻まれたマウンドに向かった。そしてそれぞれがユニフォームを脱ぐと、マウンドに捧げ始めた。

 このシーンはすぐにSNSに投稿されると、あっという間に拡散されていった。「こんな感動的な場面は見たことがない」などのメッセージをつけ画像や動画を投稿したメディアも後を絶たなかった。こうしてスカッグス投手の追悼試合は幕を閉じた。

 奇しくも試合翌日の7月13日は、スカッグス投手の28回目の誕生日だった。友を失い7月2日のレンジャーズ戦後に行われた記者会見で、人目も憚らず号泣したトラウト選手は彼の誕生日に合わせ、改めて以下のようなツイートを投稿している。

 「タイラーのような特別な人間に知り合えて本当に幸運だった。昨夜の試合は君がいたよ、45番…。そしてこれからも僕らの心の中に居続ける。愛してる、そして寂しいよ」

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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