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MLBがレイズにタンパとモントリオールを本拠地にする将来的なダブルフランチャイズ制を容認

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
常に空席が目立つレイズの本拠地球場「トロピカーナ・フィールド」(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【レイズのダブルフランチャイズ制をMLBが容認】

 ESPNなどの米複数メディアが20日に報じたところによると、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは、レイズに対し将来的にタンパとモントリオールの2箇所を本拠地とするダブルフランチャイズ制を容認したことを明らかにしたようだ。

 ただしこのプランはタンパとモントリオールに新球場を建設することが土台になっており、長期的なプランとして将来的な実現を目指していくものだという。

 過去にもMLBではダブルフランチャイズ制の実績があり、モントリオールを本拠地にしていたエキスポス(現ナショナルズ)が2003年シーズンに、22試合の主催試合をプエルトリコで実施している。

【シーズン前半はタンパ、後半はモントリオール】

 今回のプランによれば、シーズンを2つに分け、前半戦はタンパを本拠地にして、後半戦はモントリオールを本拠地にするというものだ。

 このプランが実現すれば、夏は高温で毎日のように雷雨に見舞われるフロリダとシーズン序盤はかなりの寒さが続くカナダをそれぞれ回避できるため、いずれもドーム型球場の必要性がなくなる。そうなれば建設費用をかなり節約できるだめ、両都市ともに新球場建設がより容易になるというわけだ。

【新球場建設に失敗し続けるレイズと球団を呼び戻したいモントリオール】

 レイズは現在、完全ドーム球場の「トロピカーナ・フィールド」を本拠地にしているが、その立地条件や時代遅れともいえるドーム球場から脱却するため、何度か新球場建設プランを立ち上げてきた。しかしその度に地元行政やMLBから却下されており、新球場建設はチームにとって悲願ともいえるものだ。

 一方モントリオールは、2004年シーズンを最後にエキスポスが身売りされ、地元では再チーム誘致の気運が高まっている。ここ最近は毎年のようにモントリオールでオープン戦が開催されるなど、盛り上がりを見せている。

 しかしエキスポスの本拠地球場だった「オリンピック・スタジアム」は老朽化が著しく、やはりチームを誘致するためには新球場建設が絶対条件だといわれてきた。

【レイズの観客動員低迷も影響か?】

 また長らく続いているレイズの観客動員低迷も、今回のプランを後押ししているといっていいだろう。

 かつて2008年シーズンにチーム初のワールドシリーズ進出を果たし、3年連続で平均観客動員数が2万人を超えた時期もあったが、2015年シーズン以降は1万5000人前後に留まり、毎年シーズンのように観客動員数でMLB最下位争いを続けている。

 今シーズンもチームは開幕から好調で現在もヤンキースと地区首位争いを続けているにもかかわらず、ここまで38試合の主催試合のうち14試合が1万人を割っている。中でも5月28日のブルージェイズ戦では、わずか5786人しか集客できず、チーム最少記録を更新している状況だ。

【現球場の地元市長はプランに否定的】

 だが今回のプランが、各所から受け入れられているわけではない。

 「トロピカーナ・フィールド」が位置するセント・ピーターズバーグのリック・クライスマン市長は、レイズとのリース契約が2017年まであるとした上で、以下のような声明を発表している。

 「レイズは市の理解と正式な合意文書がない限り、2028年以前にモントリオールを含め他に移ることはできない。最終的にその判断を下すのは私であり、私は市の評議会で検討するつもりもない。実際のところ、今回のプランはばからしいものだと考えている」

 果たしてMLBとレイズは、今回のプランを実現することができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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