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オークランドの地元郡警察がラプターズ社長を警察官殴打で追跡

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ファイナル優勝後に警察官殴打の嫌疑をかけられたラプターズ社長のマサイ・ウジリ氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【オークランドの地元警察がラプターズ社長を追跡】

 NBAファイナル2019は、カナダ唯一のチームであるラプターズが初の王者に輝き幕を閉じたが、その勝利の余韻が覚めやらぬ内にラプターズを驚愕させるニュースが飛び込んできた。

 『USA TODAY』紙が報じたところでは、3連覇を逃したウォリアーズが本拠地にしているオークランドの地元郡警察が同紙の取材に応じ、ラプターズのバスケットボール運営部門社長のマサイ・ウジリ氏を警察官殴打で追跡中であることを認めたということだ。

【事件はラプターズの優勝決定直後に発生】

 実はウジリ社長と警察の間で、ラプターズがウォリアーズの本拠地アリーナで実施されたファイナル第5戦に勝利し優勝を決めた直後に、ちょっとしたトラブルが起こっていた。

 ラプターズが優勝を決めた後、チームと勝利を分かち合い優勝セレモニーに参加するためコートに向かうとしたウジリ社長に対し、セキュリティに当たっていた警察官がこれを制止しようとした。その行為に対しウジリ社長が警察官を2度にわたり押し、さらに顔面を殴ったという。

 そのいさかいを発見したNBAのセキュリティが仲裁に入り両者を分け、ウジリ社長をコートにエスコートしていった。この場面は地元TV局が撮影しSNS上で公開しており、記事にも添付されている。

 ここでも添付しておくが、ウジリ社長が警察官を殴ったというシーンは撮影されていないが、ウジリ社長に向かおうとしている警察官を別のセキュリティが止めようとしているのが分かる。

【警察の発表とはやや違うSNS上で公開されている映像】

 郡警察の説明によれば、警察側は証明証(クレデンシャル)を携行していない人物をコートに向かわせないようにとの指示を受けており、コートに向かおうとしているウジリ社長が証明証を携行していなかったので、警察官が証明証を提示するよう求めたという。

 だがウジリ社長はこの求めに応じることなく証明証を提示しないまま、警察官を押し込んでコートに進もうとしたため、警察官もそれを制止しようと押し返し、最終的に前述したようないさかいに至ったとしている。

 だが記事にはSNS上で公開されている、別の動画も添付されている。こちらは、コート脇にあるアリーナ裏側の関係者控えエリアでTV観戦したウジリ社長を撮影したものだが、勝利が決まった瞬間関係者と抱き合い、その場を離れる彼がその右手にしっかり証明証を握っているのが確認できる。こちらの動画も添付しておく。

 この2本目の動画をチェックした後で、改めて1本目の動画を見てほしい。こちらの動画でもウジリ社長が右手に証明証を携行している姿が映し出されている。

【事件の目撃者が警察の見解を否定】

 さらに記事では、このいさかいを側で目撃していた、ウォリアーズ・ファンの証言を紹介している。彼の意見は警察の見解とはかなり食い違っている。

 「彼(ウジリ社長は)証明証を手に持っていてが、手は下に下がっていた。彼はそれを上げようとしていたように見えたが、前進しようとする彼に対し警察官が押し込みながらその腕を押さえ込み、『ここから先は誰も進入できない』と発しながら彼を止めようとした。

 彼は何も言わなかったし、証明証を上に上げることもなかった。警察官が押し戻そうとしたから、彼も押し返した。警察官は証明証の提示を見せてくれなんて言っていない。これ以上の会話はなかった。彼が警察官の顔を殴るところも見ていない」

【ナイジェリア出身の有能エグゼクティブ】

 ウジリ社長はNBA界では有能なエグゼクティブとして知られている。ナイジェリア出身の彼はプロ選手としてヨーロッパで6年間プレーした後、ナゲッツの国際スカウトを皮切りに、2008年にラプターズのアシスタントGM、2010年にナゲッツのGMとステップアップ。2013年には米国人以外では初となる年間最優秀エグゼクティブに選出されている。

 そして同年5月に再びラプターズに復帰すると、5年契約でGMを任され、2016年には契約延長に合意し、現職に就任。ずっとチーム強化の中心を担ってきた人物で、このオフに他チームがヘッドハンティングするのではとの報道もあるほどだ。

 とりあえずラプターズは担当機関に協力しながら調査していくとし、NBAもラプターズ、警察と連絡をとりながら情報収集に当たるとしている。何事もなく収束に向かって欲しいところだが…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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