ドラフト指名を無駄にしてまで故殿堂入り投手と遺族に敬意を表そうとしたブルージェイズの配慮

亡き父の永久欠番セレモニーに出席したブレイデン・ハラデー投手(左)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBドラフト2019が無事終了】

 毎年6月に実施されているMLBドラフトが今年も2~5日の日程で実施された。各チームともに3日間にわたり40ラウンドまで指名を行い、無事に閉幕した。

 そんな中、ドラフト最終日にブルージェイズが行った行動が、米国で話題を集めている。それについてMLB公式サイトでも詳しく報じている。

【32ラウンド目に故ロイ・ハラデーの子息を指名】

 ブルージェイズが32ラウンド目で、フロリダ州の高校出身のブレイデン・ハラデー投手を指名した。40ラウンド中32ラウンド目なので、決して注目されている選手ではないことは理解できるだろう。だがこのハラデー投手とは、2017年に自家用飛行機の墜落事故で命を落としたロイ・ハラデー投手の子息だったのだ。

 故ハラデー投手は1995年にブルージェイズからドラフト1巡目指名を受け、1998年にMLBデビューを飾ると、2009年オフにフィリーズにトレードされるまで、ブルージェイズ在籍12年間で148勝76敗を記録している。

 特に2003年は22勝7敗、防御率3.25、9完投(うち2完封)の成績を残し、サイヤング賞を受賞し、長年にわたりエースとしてチームを牽引してきた。

 そのためブルージェイズは不慮の事故で亡くなった故ハラデー投手を悼み、2018年には彼が使用していた「32」番を永久欠番にしている。その永久欠番セレモニーには遺族の1人として、今回指名されたブレイデン投手も出席している。

【大学進学を理解しながらも指名したチームが表した遺族への敬意】

 すでにご存じの方も多いと思うが、そんな故ハラデー投手は昨オフに殿堂入り投票の対象者となり、投票1年目で85.4%の得票率を得て、堂々と2019年の殿堂入り選手の1人に選ばれている。

 もうお分かり頂けるだろう。ブルージェイズは故ハラデー投手の殿堂入りに敬意を評する意味で、敢えてハラデー投手の背番号と同じ32ラウンド目に子息のブレイデン投手を指名したというわけなのだ。

 実はブルージェイズは、ブレイデン投手がペンシルバニア州立大に進学を決めていることを理解しており、彼を指名しても入団しないことも織り込み済みだった。つまりドラフト指名を無駄にしてまで、故ハラデー投手と遺族への敬意を優先したのだ。

 ロス・アトキンスGMは今回の指名について、以下のように説明している。

 「我々は家族のことも彼(ブレイデン投手)のこともよく知っているし、多くの時間を共有している。彼はペンシルバニア州立大に進学するだろう。だが彼を指名できて嬉しい」

【ブレイデン投手もSNSを通じてチームの配慮に感謝】

 MLB公式サイトによると、すでにブルージェイズは地区担当スカウトを通じて、今回の計画を事前に遺族に説明していたという。

 予定通り指名を受けたブレイデン投手は、ツイッターを通じてブルージェイズへの配慮に謝意を伝えるとともに、改めて大学進学の意思を表明するメッセージを投稿している。

 ブルージェイズがとった行動は、40ラウンドまで指名できるMLBならではのエピソードといえるかもしれない。だがドラフト指名をこんな素晴らしいことに使用する発想自体も、なかなか日本でお目にかかれるものではない。

 何とも心温まる気持ちになれるエピソードではないだろうか。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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