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【データ検証】2019年版大谷翔平は打球が上がらない?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
復帰後約1ヵ月が経過しても本来の打撃が戻らない大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【復帰後1ヵ月が経過しても調子が上がってこない大谷】

 エンゼルスの大谷翔平選手がDHとして復帰してから、およそ1ヵ月が経過しようとしている。

 6月4日時点(同日のアスレチックス戦は含まず)で、個人成績は22試合に出場し打率.225、3本塁打、14打点という状態だ。大谷選手の昨シーズンの活躍を考えれば、この成績は彼の本調子からは大きくかけ離れており、残念ながら周囲の期待を裏切っているというしかない。

 もちろんマイナーで1試合もリハビリ出場せずに、いきなり開幕1ヵ月が経過したメジャーで実戦復帰するのは簡単なことではない。ある程度の時間を要することは首脳陣も覚悟していたはずだ。

 それでもブラッド・オースマス監督が掲げる、「2番・トラウト、3番・大谷」を打線の核にするという構想は、大谷選手本来の打撃が戻らない限り機能することはない。それだけエンゼルスは苦戦を強いられることになる。

【3本塁打を打ちながらも極端に低い長打率】

 ここまでの打撃データを見る限り、昨シーズンとは大きな変化を確認することができる(本調子になっていない状態なのだから当然かもしれないが…)。その中でも顕著なのが、MLB屈指の長距離打者だったはずの大谷選手が、すっかりその影を潜めているということだ。

 昨シーズンの大谷選手の長打率は.564を誇っていた。規定打席に達していないためランク外になっているが、この値はMLB全体で単独6位に相当するものだ。

 ところが今シーズンは全20安打のうち、3本塁打以外はすべて単打ばかり。長打率も.326に留まっている。ここまでエンゼルスで本塁打を放っている打者13人の中で、ジャスティン・ボア選手(.316)に次ぐ低さだ。

【ゾーン別データで見えてくるものとは?】

 そこでMLB選手たちの詳細データを紹介しているMLB公式サイトの姉妹サイトで、大谷選手のゾーン別データを昨シーズンと比較検証してみると、実に興味深い傾向を確認できる。

 同サイトでは分野別に44のゾーン別データを紹介しているのだが、今回ここでは「ゾーン別安打数」、「ゾーン別打率」、「ゾーン別打球角度」を使って検証してみたい。

 まず「ゾーン別安打数」を見てみると、昨シーズンはベルト付近を中心に、内角、外角に関係なくバランスよく全ゾーンから安打を放っている。しかし今シーズンは、極端に外角低めに集まっているのが分かる。

2018年ゾーン別安打数(出典:MLB)
2018年ゾーン別安打数(出典:MLB)
2019年ゾーン別安打数(出典:MLB)
2019年ゾーン別安打数(出典:MLB)

 それを物語るように「ゾーン別打率」を見ても、昨シーズンは外角高め以外のどのゾーンでも安定した打率を残しているのだが、今シーズンは外角高め、外角低め、内角真ん中、低めに高打率スポットが限られている。

2018年ゾーン別打率(出典:MLB)
2018年ゾーン別打率(出典:MLB)
2019年ゾーン別打率(出典:MLB)
2019年ゾーン別打率(出典:MLB)

 その一方で、昨シーズンは得意にしていたはずのベルト付近で、今シーズンは極端に打率が落ちているのも確認できるだろう。

【打球が上がりにくいコースで安打を量産】

 それを踏まえた上で、「ゾーン別打球角度」を見てほしい。昨シーズンは外角低めと高め以外、どのゾーンでも打球に角度をつけることができていたが、今シーズンは真ん中から外角側のベルト付近から低いゾーンはほとんど打球が上がらなくなっているのだ。

2018年ゾーン別打球角度(出典:MLB)
2018年ゾーン別打球角度(出典:MLB)
2019年ゾーン別打球角度(出典:MLB)
2019年ゾーン別打球角度(出典:MLB)

 つまり今シーズンの大谷選手は、打てるゾーンが狭くなっている上、元々打球に角度がつけるのが苦手な外角低めを中心に安打を放っているのだ。これでは長打が生まれにくくなっても仕方がないだろう。

【他チームも大量データを研究済み?】

 他チームもここで紹介した以上のデータを入手し、日々研究を重ねている。大谷選手が現在のような傾向にあるのも、効果的な攻略プランが機能していることを意味するのかもしれない。

 だがその反対に、エンゼルスもこうしたデータを見てしっかり分析しているはずだ。果たして大谷選手は、この現状を打破することができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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