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残留プレーオフ回避を目指す滋賀レイクスターズで遂に覚醒し始めた高橋耕陽の爆発力と牽引力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
10日の京都戦で27得点の活躍をみせた高橋耕陽選手(筆者撮影)

【3月に先発復帰してからは平均得点は13.3得点!】

 シーズン残り4試合で残留プレーオフ回避を目指している滋賀レイクスターズだが、一時はリーグ最下位を争うほど低迷していた。しかしヘンリー・ウォーカー選手、アレン・ダーラム選手の外国籍選手2人が加入して以降チーム状態は着実に上がり、今では残留プレーオフ圏外まで順位を上げている。

 チーム好調の大きな要因は2人の新外国籍選手であることは間違いないが、それに加え高橋耕陽選手の急成長も見逃すことはできない。

 10日の京都ハンナリーズ戦では今シーズン最多タイの27得点を記録し(前節のライジングゼファー福岡戦に続き2試合連続の27得点)、チームの勝利に貢献。今シーズンの平均得点は9.4得点だが、3月に先発復帰して以降14試合に限っては13.3得点に上昇。そのうち10試合で二桁得点を記録するなど、今やチームの主要な得点源になりつつある。

【開幕当初とは見違えるほどの精神状態】

 高橋選手の変化はプレーばかりではない。彼の精神状態もシーズン開幕当初はまるで違っている。京都戦後の記者会見で、高橋選手から最初に飛び出した言葉は自分の活躍に満足したものではなく、反省を含んだ以下のような言葉だった。

 「今日勝てたのはベンチメンバーのお陰というのがあります。僕が(第4クォーターに)5ファウルして最後までコートに立てなかったことが悔しいんですけど、不用意なファウルをしていけないというのが1つ課題と、今日あの時間帯(OTの大事な局面)で(鹿野)洵生さんが3ポイントを1本決めて、その後アレンがFTを入れたというのがあり、あの2人が試合を決定づけたと思うので、今日MVPをもらったんですけど、チームで戦ってくれたお陰で獲れたので、チームメイトに感謝したいです」

 さらに現在のプレー状態についても以下のように冷静に自己分析している。

 「前半戦に比べて気持ちの変化が一番大きかったです。ミスした時に下を向いたりだとか、僕のところで流れが悪くなり自分にイラついてっていうプレーが前半戦は多かったんですけど、後半戦に入ってからそういうのがちょっとずつ減ってきていて、ミスしても次に切り替えられてたりとか…。コーチに怒られることもあるんですけど、そういう時もイライラしていたんですけど、イライラしないで次に切り替えていこうというのをやっているので、気持ちの部分ですごくシュートが打ちやすいなというか、そういうところもあります。

 やっぱり外国人2人が入ったというのが一番大きいんですけど、ボール・ムーブだったり(自分に)シュートを打たせてくれるのが大きいです。(彼らが)リバウンドを獲ってくれるという安心感というのもあるので、今は思い切りシュートを打ててますね。まだ切り替えがうまくいかない時もあるんですけど、そこで(伊藤)大司さんや(狩野)祐介さんがいつも声をかけてくれるので、それで切り替えられているのかなと思います」

 シーズン前半戦の高橋選手は、明らかにプレーに迷いがあった。しかし現在の彼はその発言からも理解できるように、とりあえず自分のプレーをやり切ろうとする積極性、自信が芽生え始めているようだ。

【元NBA選手ヘンリー・ウォーカーの熱血指導が技術面でも後押し】

 実は、高橋選手の成長を裏で支えている大きな存在がいる。これはショーン・デニスHCが指摘してくれたのだが、ここ最近高橋選手はウォーカー選手から個別に技術指導を受けており、それが確実にプレーに生かされ始めているようなのだ。

 ウォーカー選手はNBA公式戦181試合出場の実力者で、本来は高橋選手と同じ3番の選手だ。いうまでもなく同じポジションで世界トップクラスのウォーカー選手の指導が、高橋選手に役立たないはずはない。精神面だけでなく、技術面でもしっかり覚醒し始めているのだ。

 「1対1の駆け引きだったりとか、こういう風にフェイクして相手がどっちに動いたら僕はどっちに行かなければいけないというのを一緒に練習してもらっています。そういう部分で少しずつですけど、考えながら教えてもらったことが試合に出せるようになってきています。やっぱり経験してきている分、自分がどうしたらいいのか全部わかっています」

【ようやくHCの狙い通り若手有望選手の台頭、来季に確かな光明】

 元々デニスHCはシーズン開幕当初から高橋選手ら若手有望選手の成長を促しながら戦っていく姿勢をみせていた。それがようやく実を結び始め同HCも、高橋選手のみならず中村功平選手、さらに開幕前に1年間の出場停止処分を受けていた佐藤卓磨選手(11日に処分解除)らも着実に力をつけてきていると実感できているという。

 その上でデニスHCは、高橋選手に今後さらなる成長を期待している。

 「彼(高橋選手)を厳しい枠にはめてしまって制限をしてしまうと成長できない選手だと思っていますので、ある程度自由にやらせて間違いを犯しながらも学んでいくことが必要だと思っています。その中で良くなったり悪くなったりということもあるでしょうが、我々としては承知で彼が成長してもらえるように機会を与えていかねばいけないと思います。

 コーチとしては彼が成長する上で、自主練習もより多くして、そして試合映像をしっかり見て学んでいく必要があると思います。その部分でだいぶ良くなってきているんですけど、あと2、3年経てばもっと大きく成長してくれるものと思っています」

 来シーズンに向け好材料が揃い始めたレイクスターズ。今は最高のかたちでシーズンを締めくくるしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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