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MLBが冬の時代に突入?! 40人枠ロースター入り全選手の平均年俸額が2年連続でダウンへ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
マイク・トラウト選手がMLB史上最高額で契約延長する一方でMLB全体は縮小傾向に(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【872選手が調査対象、前年比で1.1%減】

 AP通信は現地26日、開幕目前の各チームの40人枠ロースター入り全選手の平均年俸額が2年連続でダウンしたと報じた。この2年間オフのFA市場がすっかり冷え込む中、各チームの年俸総額が減少傾向にあることが浮き彫りになった。

 AP通信では開幕直前のこの時期に、毎年年俸調査を実施しているが、今年も3月25日時点で各チームの40人枠ロースターに入っている全872選手(60日間DL入り選手も含む)の年俸額を調査した結果、平均年俸額は436万ドル(約4億8000万円)で前年比で1.1%のダウンとなった。昨年も前々年比0.9%減だったため、2年連続で減少していることが明らかになった。

【選手会調査では3年連続ダウンに!】

 AP通信の調査では、今年のダウンは1994年シーズン途中から1995年にかけて選手会が行ったストライキ以降で見ると、2004年、2018年に続き3度目のダウンとなる。

 ただチームから契約解除のオプション権(いわゆる「バイアウト」)を行使された選手も加えて調査する選手会では、2017年も前年よりダウンしていると主張しており、実は3年連続で減少傾向にあるという見方もできるのだ。

 こうした状況の中、選手会のトニー・クラーク専務理事はAP通信に対し以下のような声明を出し、ここ最近のFA市場に警鐘を鳴らしている。

 「FAは野球界の経済システムを動かしている要素の1つだ。選手たちが前に進んでいく上でもFAが意味あるオプションであり続ける必要がある」

【このままでは選手の年俸は二極分化してしまう?】

 だがチーム側は、ただ単に財布のひもを締めているわけではない。FA市場が停滞していた一方で、マニー・マチャド選手とブライス・ハーパー選手が次々にFA史上最高額を更新する大型契約を結び、さらにはノーラン・アレナド選手とマイク・トラウト選手が平均年俸額で3000万ドル(約33億円)を上回る破格のオファーで長期契約延長に合意している。

 その一方で、ベテランFA選手は厳しい境遇に置かれているのは確かだ。昨年は1700万ドル(約19億円)を超える年俸を得ていたアダム・ジョーンズ選手は、基本給300万ドル(約3億3000万円)+インセンティブの1年契約でダイヤモンド入りするしかなかった。だがメジャー契約を獲得した彼は幸運な1人で、多くのベテランFA選手たちが泣く泣くマイナー契約を結んでいる状況だ。

 つまりごく一部の選手たちが高額年俸を獲得する一方で、多くのベテラン選手たちがかつてのような評価を受けられなくなっており、大谷翔平選手のようになかなか年俸が上がらない年俸調停権を得る前の若手選手と合わせて、選手の年俸が二極分化し始めている。

 これは選手会にとって危機的状況ともいえる。果たして選手会は打開策を見出すことができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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