浪人覚悟?のキンブレルを1年限定でもいいからNPBで見てみたい!

この独特のフォームはクレイグ・キンブレル投手の代名詞だ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 前年に引き続き、今オフのFA市場は記録的な停滞を続けている。それを物語るように、トップFA選手の1人だったマニー・マチャド選手がようやくパドレスと正式契約できたものの、未だ多くの有力FA選手が未契約のままの状態だ。

 そんな中、米メディアが現地23日、注目すべき記事を配信した。同じくトップFA選手の1人だったクレイグ・キンブレル投手が、自分の希望額にあったオファーが届かなかった場合、今シーズンは浪人生活を覚悟しているというものだ。第一報をもたらしたのは、スポーツ専門サイト『The Athletic』のジム・ボウデン記者の以下のようなツイートだったようだ。

 その内容は、複数のGMからの話として現時点でキンブレル投手が受けているオファーは未だに希望額に達しておらず、同投手の関係者はこのまま希望額に近づかないようなら、彼は今シーズンは浪人する考えがあると話している、というものだ。

 ただしこの報道はやや信憑性に欠けるようだ。同じサイトに記事を投稿しているケン・ローゼンタール記者はボウデン記者のツイートを受け、キンブレル投手のエージェントであるデビッド・ミーター氏に確認し、まったく正反対の内容のツイートを投稿している。

 ミーター氏によれば、キンブレル投手が浪人することも考慮しているというのは不正確なもので、もうすぐ新しい契約にサインするのを待ち侘びており、今シーズンはプレーしないという報道は間違っている、と説明している(ちなみに米国では同じサイトで仕事をしていたとしても記者は個別単位で契約しており、それぞれの記者が独自の情報源を持っているため、同じサイトで正反対の内容の記事が登場することは決して珍しくない)。当面はシーズン開幕までキンブレル投手の去就を見守るしかなさそうだ。

 現在のキンブレル投手は、MLB屈指のクローザーとして評価されている。2010年にブレーブスでMLBデビューを飾ると、翌年からクローザーを任され、4年連続でセーブ王を獲得し一躍トップクローザーに仲間入りした。その後2015年にブレーブスからパドレスへ、さらに2016年にパドレスからレッドソックスへトレードされ、昨年はレッドソックスで42セーブを挙げワールドシリーズ制覇に貢献。シーズン終了後にFA選手になっていた。

 通算成績はMLB在籍9年間で31勝19敗333セーブ、防御率1.91。今年5月に31歳になるが、まだまだ5、6年の長期契約を結んでも問題ない年齢だ。もちろんキンブレル投手も大型契約を期待しており、昨年末に同投手は6年総額1億ドル(約110億円)を希望していると報じられている。

 しかし古巣のレッドソックスは早々にキンブレル投手との再契約を否定するなど、決して彼に対する評価は芳しいものではなかった。その後のメディア報道によれば数チームがオファーを提示していたようだが、今なお合意に至っていない。

 今もブライス・ハーパー選手を含めたトップFA選手たちが契約交渉中であることを考えても、キンブレル投手もシーズン開幕までギリギリの交渉が続くのは間違いないところで、ミーター氏が説明するように、急転直下で合意に至る可能性は十分にある。ただもしこのまま契約できないようなことがあれば、そこから大型契約を結ぶのはかなり難しくなってしまうので、ボウデン記者のツイート通りに浪人せざるを得なくなるケースも否定はできないだろう。

 そこで思い出して欲しいのが、ボブ・ホーナー選手だ。40代以降の野球ファンなら聞き覚えのある名前だと思うが、1987年に現役メジャーリーガーとしてヤクルトに電撃加入し、たった1年でMLBに復帰していった選手だ。

 ホーナー選手はブレーブス在籍9年間で215本塁打、652打点を記録し、1986年シーズン終了後にFA選手になった。しかし希望額のオファーを受けられないまま浪人生活に入るかと思われたが、急きょヤクルト入りが決まり来日。93試合に出場し、打率.327、31本塁打、73打点を記録する活躍をみせたものの、翌年はカージナルスと契約しMLBに復帰している。

 打者であるホーナー選手と違い投手であるキンブレル投手の場合、たった1年とはいえNPB入りすることはボールやマウンドの違いによる環境変化によるリスクは伴うものだ。ただ1シーズンを棒に振り浪人生活を送るよりは、しっかり実戦を積んでいた方がスムーズにMLBに復帰できるはずだ。また1年限定を前提としたオファーならキンブレル投手もNPBに挑戦しやすいだろうし、NPBの方もそれを理由に年俸額も節約できるだろう。

 NPBではここ数年、クローザーを含めリリーフ投手でパワー派の外国人投手が成功を収めている。そんな状況下でMLBの現役トップクローザーがNPBのマウンドに立ったなら、どんな投球を披露してくれるのだろうか。想像するだけでワクワクしてこないだろうか。

 キンブレル投手に浪人生活をさせるくらいなら、ぜひNPBチームは本気で獲得に乗り出して欲しいと願うばかりだ。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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