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京都ハンナリーズの秘密兵器!? 大学生選手・玉木祥護に託された将来性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーズン後半戦の急成長を期待される玉木祥護選手(左・筆者撮影)

 昨年末から京都ハンナリーズが厳しい戦いを強いられている。12月26日のライジングゼファー福岡に敗れてから5連敗を喫し、勝率5割を割り込んでシーズン前半戦を終了した。前節にレバンガ北海道に連勝し、18勝17敗と貯金1つまで戻しているが、2年連続チャンピオンシップ進出に向け、まだまだ予断を許さない状況だ。

 ここまで苦戦を強いられている要因の1つは、シーズン開幕前から予想されていた選手層の薄さだ。日本人ビッグマンの永吉佑也選手が1年間の出場停止処分を受けたことに加え、控えPGの綿貫瞬選手が負傷のため長期欠場を余儀なくされる中、チームは基本的に外国籍選手2人と昨シーズンからの残留組5人の7選手を中心に試合を回していくしかなかった。

 特にジュリアン・マブンガ選手、デイヴッド・サイモン選手の外国籍選手は浜口炎HCの戦略で、開幕からほぼ全試合フル出場を続けており、今シーズンの過密スケジュールも手伝い否応なしに疲労を蓄積させていった。ここ最近の彼らのプレーぶりからも疲労の色は如実に現れており、それが結果的にチーム力を減退させていった。綿貫選手の復帰もそうだが、しっかり起用ローテーションに入り少しでも外国籍選手を休ませる新戦力が必要不可欠だった。

 そんな状況下で、チームは1月2日に特別指定選手で玉木祥護選手を獲得した。今年3月に卒業予定の筑波大4年生だ。もちろん22歳の現役大学生選手が即戦力として機能するのは不可能だが、浜口HCはシーズン後半戦の戦力として大きな期待を寄せている。

 195センチ、93キロという恵まれた体格。高校からバスケを始めながらU-18の代表に選出され、大学進学後もU-22、U-24で代表入りを果たし、昨年のウィリアムジョーンズカップ、アジア大会でも日本代表としてプレーしている。まさに日本バスケ界の若手ホープの1人だ。

 チーム合流後はすべての試合で出場機会を与えられており(前節は卒論発表でチームに帯同せず)、浜口HCの期待度の高さが窺い知れるだろう。同HCは今後も経験を積ませながら成長を促していく予定で、シーズン終盤にはローテーションの1人としてある程度の出場時間を任せられるような存在になって欲しいというビジョンを明かしている。

 ただ玉木選手にとってBリーグ挑戦は簡単なものではない。京都では彼の将来を見据え、大学時代までの4番ではなく3番選手として育てていく方針を示しており、これまでのプレースタイルとは大幅に違ってくる。まさにプロの世界で新たなバスケ選手に変貌しようとしているのだ。それでも1月23日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で出場4試合目にして初得点を記録。少しずつながらも前に進んでいる。

名古屋戦のハーフタイム中にACからアドバイスを受ける玉木選手(筆者撮影)
名古屋戦のハーフタイム中にACからアドバイスを受ける玉木選手(筆者撮影)

 「(リーグ初得点は)入った瞬間、非常に嬉しい気持ちはありましたけど、結構待たせてしまったんじゃないかというのもあって(笑)。でも特にホームゲームでこうやって点が決められたのは非常によかったと思います。本当はデビュー戦で…。出ている試合では毎試合(シュートを)打っているので、しっかり決められていたらなと思うんですけど、まだまだ未熟だなというのを痛感している期間になりましたし、ここからしっかりとチームのためにどんどんスタッツを残せるような貢献ができるように努力していくべきだと思っているので、そこはしっかりやっていきたいです。

 大学と違ってポジションも大きく変わって、大学では4番、5番でコートを下から見ていたんですけど、それが逆転してリングに向かってアタックするというのがやっぱり大きな違いで、自分の身体が慣れていないというのをすごく感じますが、でもアシスタントコーチの2人だったり、他の選手の皆さんもアドバイスをくれて、練習でも、またチーム練習以外でも自主練として多くの時間をやっているので、もっとこういう経験を積み重ねていけば、今後もっとよくなっていくと自分でも信じてやっているので、そこは努力していきたいです」

 もし京都が昨シーズン同様にしっかり戦える戦力が整っていたならば、玉木選手に毎試合のように経験を積ませる場を与えられたか微妙なところだろう。だが前述通り、現在のチーム状況は待ったなしの状態だ。玉木選手の成長がなければ、今後もギリギリの戦いを強いられることになるのだ。玉木選手を成長させながらチャンピオンシップ進出を狙うというのは、ある意味虫がいい話に聞こえるかもしれないが、浜口HCの大きな賭けといえるだろう。

 「炎さんも新人の自分をチャンスがあれば試合に出してくれているので、そういう期待にはしっかり応えていけるように頑張っていきたいと思っています」

 そうした浜口HC、チームからの期待を、玉木選手は十分に感じ取っている。その中で彼は自分のプレーを冷静に見つめながら、Bリーグという舞台に怖じ気づくことなく前を見据えている。

 「(相手選手に)やられている部分を振り返ってみると、やっぱり自分のミスなんですよね。もう少しあの場面でこうしていればよかったなと思うことがあるので、そこをしっかり突き詰めて直していけば、たとえ外国人選手とやってもシュートを打たせないとまではいわないですけど、シュートを外させることぐらいまではいけると思っているので、そこは怖じ気づかないでどんどん攻めて、守っていきたいなと思いなすね。(Bリーグで)やれるとは思っています」

 目標にしている特定の選手がいるわけではなく、Bリーグで研鑽を重ねながら自分なりの3番選手像を築き上げていきたいと話す玉木選手。彼が経験のためではなく、主力選手の一員として出場時間を得られるようになった時、浜口HCの狙い通り、チームはチャンピオンシップ進出という目標に大きく近づいていることだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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