野球界、スポーツ界のために! 批判覚悟で有言実行し続ける筒香嘉智が語った22分間に込められた思い

今年も野球体験会を通じて子供たちと交流した筒香嘉智選手(筆者撮影)

「野球は楽しいもの」約80名の子供たちと笑顔で交流

 DeNAの筒香嘉智選手が14日、自身がスーパーバイザーを務める小学生硬式野球チーム『堺ビッグボーイズ小学部(通称:チーム・アグレシーボ)』の体験会に参加し、約80名の子供たちと野球を通じて交流した。

 この体験会は今年で3回目で、対象者は4~6歳の未就学児と小学1~3年生の野球未体験の学童たち。普段チームで行っているメニューを経験してもらいながら、野球の楽しさを体感してもらおうというものだ。体験会では終始子供たちの笑顔に包まれていた。

 堺ビッグボーイズは、筒香選手が中学時代に所属していたチームだ。野球界におけるジュニアの育成のあり方に疑問を抱き続けた筒香選手が、同チームの運営母体であるNPO法人『BBフューチャー』で代表を務める瀬野竜之介氏の育成理念に共感し、2017年に小学部が創設されたのを機に同チームのスーパーバイザーに就任し、チーム監修の責任者を務めている。

体験会で野球界へ提言し続ける筒香選手

 この体験会は子供たちが野球を体験する場だけではなく、取材に訪れたメディアを前に筒香選手が歯に衣着せることなく、彼が現在の野球界に抱く思いを披瀝する場にもなっている。今年も体験会終了後に囲み取材に応じ、約22分間にわたり筒香選手の偽らざる思いを明らかにしている。

 特に昨年からメディアの質問に応じる前に、会見冒頭に筒香選手から口を開き、まず自分の考えをメディアに理解してもらうように激白する時間が設けられるようになったのだが、今年も冒頭の8分間、言葉を噛みしめながら語り続けた。そこで改めて、子供たちの育成を無視するかのような大人主体の現場のあり方に警鐘を鳴らしている。

 以下、筒香選手が語った冒頭の8分間をすべて紹介する。

 

自ら口を開いた冒頭の8分間を一挙紹介

 「本日はアグレシーボ体験会にご参加頂き本当にありがとうございました。昨年このアグレシーボ体験会でお話ししたことがいろいろなかたちで取り上げて頂きました。それがきっかけとなり、昨年11月に本(『空に向かってかっ飛ばせ! 未来のアスリートたちへ』)を出版することができました。これもこういう場所での発信の成果の1つだと思っています。本日は私が感じていることや、もっとこうすれば良くなるのではないかという思いをお話しさせて頂きたいなと思います。

 昨年はスポーツ界で良くないニュースが数多く取り沙汰されました。皆さんご承知の通り、アメリカンフットボールの悪質タックルやボクシング界、体操など、たくさん多くの良くない問題点が浮き彫りになりました。これも偶然ではなく、スポーツ界全体が変わらなければいけないのではと感じます。

 残念ながら野球界でも、全国大会にたくさん出ている、そして優勝もしている強豪少年野球チームの監督の暴言、暴力の映像が出てきました。これも1つのチームの問題ではなく、今までこういうことが行われてきたのが現実なんだなと思っています。

 これから子供たちのことについて本当に考えた時に、今行われている指導が正しいのかと、みんながもっとなぜこういう問題が起こってしまうのかという部分を掘り下げて、考えていかないといけないのかなと思っています。

自ら足を運んだ少年野球チームで目撃したもの

 私も先日、ある少年野球チームの方に見学しに行きました。そこで指導者の方が、指導というよりは暴言、罵声、事細かい指示が行われていました。子供たちはできないのが当たり前なのに、なぜそれに腹を立てて怒っているのか、(指導のあり方が)大人が中心になっているのではないかなと私は感じました。

 先ほど言った通り、常に勝つことが優先されることから来る、厳しく長い練習時間や過密な試合日程で、子供たちに本当に大きな負担がかかっている現実をもっと皆さんが知るべきなのではないのかなと思います。

 堺ビッグボーイズの小学部に入部して頂いている保護者の皆様からも、地域の野球チームの見学に行った時に、あまりに指導者の方が怖いのでためらったという方もいました。また朝から晩まで長い練習があるので、子供たちは遊びに行く時間もない、勉強する時間もない、親の方も長い時間(練習グラウンドに)いないといけないので疲れる、他のことが何もできないという声も聞かれました。

子供たちに負担を強いる現在の大会方式

 今小中学生では大会の数が、かなりの数がだんだん増えてきているというふうに聞いています。その理由の1つとして企業や新聞社の方などが主催、後援して行われる大会をしています。これはほとんどがトーナメント制で、勝ち進めば進むほど過密な日程になり、子供たちへの負担はかなり大きくなっていると聞いています。皆さんが良かれと思ってやっているのですが、かえって子供たちの負担になっている、子供たちが犠牲になっているという観点を知るべきなのではないのかなと思っています。

 プロ野球の11球団も各地で大会を開いていますが、それもトーナメント制で、試合日程が勝ち進むにつれてかなり過密になっています。強いチームの子供ほど、ひじや肩を壊すというケースがすごく多いです。酷い場合では小学生なのに手術しないといけないという子供も(いるというのを)多く聞きます。医学的な観点から病院の先生に聞いたところもですが、一度小さい頃に痛めたひじや肩というのは再度発症する確率が格段に上がるというふうに聞きます。

 本当に子供たちのためになっているのかということを皆さんが考えた時に、今も環境が子供たちのためになっていない、良かれと思ってやったことが逆に子供たちの負担になっていると言うことが多くのケースあると思います。もっともっと大人の皆さんが理解して、子供たちを守るということをしていかないと、日本の野球界は変わっていかないと僕は思っています。

筒香選手が考える子供たちへの野球普及活動とは

 堺ビッグボーイズは今、小学部が70人ほどいます。野球人口が減っていくと言われている中で楽しい環境をつくれば、こうしてもっと野球人口が増えていくのかなと感じています。

 僕もこのような体験会をさせて頂きましたが、野球界これからどんどん体験会が増えていくと思います。また高野連も今後の構想として、野球の普及を挙げています。高校野球の部員たちが全国の野球をしたことのない子供たちのところに出向いて、野球の素晴らしさやいいところを教える活動をすると思います。その活動自体は悪いことではなくすごくいいことだと思うんですけど、そこで野球の楽しみを知った子供たち、野球に興味を持った子供たちが入った時のチームの環境、そこが変わらなければまた同じ繰り返しになると思います。

 先ほども言わせて頂きましたが、堺ビッグボーイズのような取り組みが全国に広がり、子供たちが将来活躍できる環境をつくることが大事だと思っています。野球を通じて子供たちが人生に生かせなければ、本当の意味で野球を普及する意味が僕はないと思っています。ここにいる皆さんのご協力も必要不可欠ですので、皆さんで智恵を搾り合っていい野球界にできるように、協力よろしくお願いします。本日はありがとうございました」

野球界が変わるまで発信し続ける覚悟と責任

 この発言からも理解できるように、筒香選手は現在野球界の指導現場で行われている実情に強い危機感を抱いている。ここ最近は他でも体験会や野球教室が開催されるようになり普及活動は広がりを見せる一方で、「野球チームの指導者の方があまり変わっていないという現実がある」と核心部分は今も旧態依然としていると説明する。

 世代ごとに組織が分離し、リーグ組織によって方針が異なる野球界で、現役プロ選手の言葉がどこまで関係者に届くのかは定かではない。ただ野球界に入ってくる子供たちを守るためにもこれからも発信していく覚悟を問われ、「はい、勿論です」と断言する筒香選手。彼が背負おうとしているものに、野球関係者はもっと真摯に向き合うべきではないだろうか。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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