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高校途中までラグビー選手!? Bリーグ福岡の外国籍選手ローソンは魅力溢れるダイヤの原石だった

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
Bリーグでステップアップを目指すベンジャミン・ローソン選手(筆者撮影)

 今シーズンからB1に昇格したライジングゼファー福岡。リーグ創設3年目で念願の昇格を果たしたものの、シーズン開幕当初は11連敗スタートとB1チームとの実力差に苦しめられた。

 しかし10月下旬にHCが交代し、ボブ・ナッシュ現HC指揮の下徐々に調子を上げていき、11月3日の京都ハンナリーズ戦で今シーズン初勝利を挙げると、12月26日のハンナリーズ戦では78対73で勝利し今シーズン2度目の連勝に成功。11連敗後は7勝9敗と健闘を見せ始めている。

 そんなライジングゼファーの中でチームとともに成長を目指し、初めてBリーグに乗り込んできた外国籍選手がいる。英国出身の23歳、ベンジャミン・ローソン選手だ。

 Bリーグではどんな外国籍選手を獲得するかがチーム成功のカギを握っているといっていい。基本的にはどのチームとも、NBAなどで十分な実績を積んできた経験豊富な選手に食指を伸ばすものだ。しかしローソン選手は昨年ウェスタンケンタッキー大を卒業した後、キプロスのセミプロリーグに在籍しており、今シーズンが実質的なプロ選手生活1年目といえる、まったく未知数の選手なのだ。

 しかもBリーグに辿り着くまでの課程も実にユニークそのものだ。元々はラグビー選手からバスケに転身してきたという異色選手だ。その理由をローソン選手本人に説明してもらおう。

 「元々は数年間ラグビーをやっていた。ポジションはバックスだった。ところが身長が伸び2メートルを超えると、コーチからセカンドロー(いわゆるロック)をやるようにいわれたんだ。でもそのポジションは(スクラムなどで)耳が潰れてしまうから…(笑)。それが嫌だったからラグビーを辞めて16歳からバスケを始めることにしたんだ」

 今でもラグビーを愛しているというローソン選手。もしコーチからポジション変更を指示されていなかったら、バスケをしていなかったかもしれない。しかしバスケ転身が間違いなく彼にとって人生の転機となった。高校途中から始めたバスケだったが、周囲は彼の才能を見逃さなかった。元々は英国の大学に入学するつもりだったが、ある練習に参加したところ、ある英国人コーチの目に留まり、そのまま飛行機に乗せられ米国に連れて行かれると、コーチの息子が過去に所属していた縁でウェスタンケンタッキー大のトライアウトを受け見事合格した。

 ただウェスタンケンタッキー大は、何人かのNBA選手を輩出しているNCAAディビジョンIに属するレベルの高い大学だ。バスケを始めたばかりのローソン選手がいきなり活躍できるところではなく、目立った活躍ができないまま大学4年間を終えている。もちろん卒業後はNBAなどのプロリーグから注目される存在ではなく、前述通りキプロスのセミプロリーグに回るしかなかった。

 しかし昨シーズンのキプロスでの活躍が評価され、今年夏にロサンゼルスで行われたNBAや海外リーグの関係者が集まるトライアウトに招待されたることになった。そこで2日間にわたり関係者にプレーを披露したところ、ナッシュHCから声をかけられライジングゼファーと契約することができたというわけだ。

 まだまだバスケ選手としての経験も不十分なローソン選手が、Bリーグに来て即戦力になれるのは簡単ではなかった。そのデビュー戦は散々だったようだ。

 「最初のプレシーズン試合は酷いなんてもんじゃなかったよ(笑)。だがそれが自分を変えるきっかけになった。コーチたちも助けてくれるし、徐々に(Bリーグのレベルに)慣れてきていると思う。

 今はチームみんなが成長へと向かっている中、その中で自分も毎試合出場機会を得られていることがすごく嬉しい。こうしたチームが成長を続けていけば、自分自身もどんどん成長していけると思っている」

 公表サイズは216センチ、104キロ。やや線は細いものの、身長はBリーグの中でトップクラスだ。これまでのバスケ選手としてのキャリアを考えれば、その伸びしろは計り知れないものがある。すでに現時点で1試合当たりの平均スタッツは14.0得点、9.7リバウンド、2.0アシスト、1.5ブロックショット──とまずまずの成績を残しており、本人の言葉通りこのまま順調に成長していけば、Bリーグで最強センターとして君臨できる可能性もあるのではないだろうか。

 「もちろん自分自身も有望選手としてどんどん成長していきたいと思っている。身体能力も悪くないし、ダンクもできる。あとはスキル能力を上げるために一生懸命取り組んでいる。

 Bリーグに所属できていることは自分にとってパーフェクトなんだ。十分な出場時間を与えられ、NBAで10年以上の経験のある素晴らしい選手たちを相手にしている。経験豊富でバスケIQの高い選手たちと対戦するのは自分が成長していく上で最高の試験だ。とにかく今は上だけを目指してやっている」

 日本人選手ばかりでなく、ローソン選手のような外国籍選手がBリーグを踏み台にして世界に羽ばたいていく姿も見てみたいものだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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