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「もちろん準備できている」 左足手術から調子を上げてきたニック・ファジーカスが日本代表として戦う誇り

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
左足手術からようやく調子を上げてきたニック・ファジーカス選手(筆者撮影)

 この夏に左足関節遊離体摘出手術を受け、やや調整が遅れていた川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカス選手が、ようやく前節(10月最終週)の琉球ゴールデンキングス第2戦から先発に復帰し、この週末に行われた第7節では大阪エヴェッサと対戦し、第1、2戦ともにチーム最多得点を記録するなどして、チームを連勝に導いている。

 特に圧巻だったのが第1戦だ。38分32秒とほぼコートに立ち続け、32得点、10リバウンド、8アシスト、2スティールを記録。シュート成功率でも3点シュートに関しては3本すべてを外しているものの、2点シュートは19本中14本をリングに沈める桁外れの得点能力をみせつけ、コート上をほぼ完全支配してしまった。

 「ニックの調子が戻ってきて、彼が起点となっていいゲームができるようになったと思いますけど、ただそこが多いような気がするので、(他にも)得点がとれる外国人選手がいますので、そこで得点を分散させたいなというところがまだあります。

 元々は得点がとれないというのがあったので、そこは改善しつつあるとも思います。やはり相手が守りづらいオフェンスに繋げられるように、ノーマークの選手が得点をとれるようにという思い入れがあるんですけど、まだちょっとニックに偏っているなというところがあるので、そこは練習しながら修正していきたいと思います」

 北卓也HCが説明するように、ファジーカス選手の調子が戻ってきたことで、課題だったチームの得点不足も改善されつつある。だがその一方で、ファジーカス選手の影響力が大きい分、チームとして彼に頼ってしまう傾向が強くなってもいるようだ。だがファジーカス選手が先発に復帰してからは3戦全勝と、チームは確実に状態が良くなっているのは間違いない。

 肝心のファジーカス選手自身は、手術後3ヶ月が経過し、現在のコンディションについてどう感じているのだろうか。

 「これまでも説明してきているけど、徐々によくなってきている。現在は75~80%くらいまで戻ってきていると思う。(今シーズンは)スケジュールがタイトで水曜日にも試合が入り、なかなか練習する時間がとれなかったけど、間違いなくいい状態に近づいている。これからも練習をこなしながら上げていきたい。

 すでに長時間試合でプレーできるようになっているし、ほぼ100%の状態になっていると思っている人もいると思うけど、まだ自分の中ではちょっとした動きだったり、ジャンプだったり、リバウンドだったり、自分がしたいと思っているところまでは達していない感覚がある。ただ今はしっかりシュートが決められるようになっているし、長時間試合に出場できるようになっている。毎週試合を重ねながら、確実に強く、良くなってきている。もう最終コーナーを回っており、あと2、3のことをクリアすれば万全になれると思う」

 まだ本人の中では完全復活とまでは言い切れないようだが、あと一歩のところまで迫っている。そうした最終調整は、ウェートトレーニングや個人練習で十分に補えると説明してくれた。

 ファジーカス選手といえば、今年4月に日本国籍を取得するとすぐに日本代表に招集され、長年日本バスケが課題にしていたインサイドとリバウンドを解消できる選手として、すでに代表の大黒柱的存在になっている。9月に行われたFIBAワールドカップ2019アジア地区2次予選のカザフスタン、イラン戦の2試合には手術のため欠場を余儀なくされていたが、11月30日、12月3日に迫ったカタール、カザフスタン戦には絶対に必要な戦力だ。

 「もちろん準備はできている。とにかく2試合戦えることにエキサイトしている。前回の2試合は調整が間に合わず出場できなかったけど、次回の2試合は間違いなく自分が頼りにされていると思っている。ラマスHCと話をした時も、自分たちの仕事をしっかりやり遂げる必要があるといっていた。すべてがいい状態で試合に臨みたい」

 前回の2試合で活躍した八村塁選手と渡邊雄太選手はすでに米国で新たなシーズンを迎えており、次の2戦は彼ら無しで戦わなければならない。その分ファジーカス選手が果たすべき役割はかなり大きくなりそうだが、その辺については本人は冷静に受け止めている。

 「確かに少しは今まで以上のことが求められるかもしれないが、代表には多くのいい選手がいて、皆がいろいろなことができる選手ばかりだ。むしろ自分の果たすべき役割は、コート上のすべての選手がいいプレーができるようにすることなのかもしれない。

 2試合勝つチャンスはあると思っている。自分は前回のカザフスタン戦を欠場し、カタールとは初対決になる。だが敵地でカザフスタンを破ったのは大きな勝利だったし、チームもここに来て4連勝と勢いも出てきている。2試合とも日本で戦えるし、ホームコートの利点を生かして2試合とも勝利できればいいね」

 これらの発言からも理解できるように、ファジーカス選手は着実にカタール、カザフスタン戦に照準を合わせている。我々は心配しなくても、彼は万全の状態で日の丸ジャージーを着てコートに立ってくれるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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