真の“リアル桜木花道”へ 今シーズンの晴山ケビンが抱き続ける自覚とチームが寄せる大いなる期待

28日のアルバルク東京戦でベンチに迎え入れられる晴山ケビン選手(筆者撮影)

 すでに本欄でも何度か紹介しているが、京都ハンナリーズの晴山ケビン選手はバスケファンの間で、“リアル桜木花道”と呼ばれている。井上雄彦氏の不朽の名作『スラムダンク』の主人公、桜木花道と同じ道を歩み、現実の世界で高校からバスケを始め、高1の夏にインターハイ出場を果たしたからだ。ただその経歴が注目されたものであって、晴山選手の性格やプレースタイルまでが桜木花道に似ていたわけではない。

 だが今シーズンの晴山選手は単にその経歴だけではなく、湘北高校で桜木花道が果たしてきたような存在感をチームから期待されており、当の本人もそれを自覚している。まさに真の“リアル桜木花道”になろうとしているのだ。そんな晴山選手が目指している理想のパフォーマンスを披露したのが、28日のアルバルク東京戦だった。

 シーズン第6節で地元京都で昨シーズンのリーグ王者と激突。前日の第1戦はリバウンドで31-43と圧倒され、67-77に敗れていた。雪辱を期した第2戦は立ち上がりからハンナリーズが猛攻を繰り広げ、第1クォーターを25-15で制し、試合の主導権を握った。このクォーターだけで10得点を記録した晴山選手がチームに勢いをもたらした。

 もちろん攻撃ばかりではない。相手のエース、田中大貴選手や馬場雄大選手のマークにつきながらディフェンスでも奮闘。結局31分47秒に出場し、チーム2位の18得点、チーム1位タイの8リバウンドを記録。晴山選手の活躍もあり、この日はリバウンドでも30ー31と互角の勝負を演じ、アルバルクから貴重な勝利をもぎ取った。晴山選手自身は第4クォーター途中でベンチに下がっているが、「もう足にきてました」とコート上ですべてを出し切った状態だった。

 今シーズンのハンナリーズは苦戦が予想されていた。開幕前の不祥事で日本人ビッグマンの永吉佑也選手が1年間の出場停止処分になり、フロントコートの選手不足が明らかだったからだ。そんな状況の中で一番の責任感を抱いていたのが晴山選手だった。チーム練習を見学に行った際も彼の方から「自分がリバウンド頑張るしかないですね」と声をかけてくれた。その直後に浜口炎HCが教えてくれたのだが、シーズンを迎えるに当たりスピードを落とさずに体重を増やし(本人から4キロ増と確認)、チームに合流してきたのだという。

 シーズンが開幕してからも、彼の自覚は揺るぐことはなかった。本拠地開幕戦となった22日の横浜ビー・コルセアーズ戦後に、以下のように話している。

 「(4番でやる)自信はあります。まだヘッドコーチが(自分を)4番で使い、ジュリアン(マブンガ選手)やデイヴィッド(サイモン選手)を休ませようという考えになっていないということは、まだまだ自分の力不足なのかなと思っています。もっともっと4番でできるぞというのをアピールして(外国籍選手に)休んでもらわないと、今後痛い思いをするのは自分たちなので、早い段階で4番に慣れていきたいと思っています。

 オフェンス面では(スペースが)空いたら打つっていうのは変わらないですけど、ディフェンス面で自分より逆に小さい2番や1番の選手につけることが必要なので、全ポジション…、5番はちょっとキツいかもしれないですけど(笑)、1番から4番のディフェンスをできるオールラウンドなディフェンダーになりたいというのが最終的な目標なので、そこを目指しています」

 もちろん晴山選手に期待されているのはディフェンスだけでなく、オフェンスにおいてもだ。こちらはスタッツからも明らかなように、昨シーズンと比較しても平均得点(5.5得点→10.0得点)、シュート成功率(40.1%→46.2%)ともに向上しており、すでに現時点でもチームの大事な得点源になり始めている。

 チーム内では外国籍2選手は期待通りの活躍をみせ、また内海慎吾選手、岡田優介選手、片岡大晴選手、綿貫瞬選手のベテラン4選手も引き続き献身的なプレーを続けている。それは浜口HCとしても“想定内”のことであるはずだ。あとは晴山選手がどれだけ成長し、チームの“Xファクター”になれるかが、今後のカギを握っているといっていいだろう(もちろん伊藤達哉選手の更なる飛躍も絶対に忘れてはいけない)。まさに桜木花道が成長していくごとに湘北高校が強くなっていった過程と同じなのだ。

 28日の試合後、アルバルクのルカ・パヴィチェヴィッチHCはハンナリーズについて以下のように話している。

 「彼らがリーグ内でベストチームの1つだとは思わないが、ただそれぞれの試合においてベストチームになれる力を持っている」

 リーグ王者のパヴィチェヴィッチHCから見ても、チームが1つになった時にとんでもない力を発揮するハンナリーズが侮れない存在だと感じているようだ。そんなチーム的な特長も湘北高校とダブってしまう。

 「炎さんから求められることが日に日に多くなっているのは事実ですし、多くなっている理由は自分が1つ1つクリアしているから、次のレベルを求められていると思います。そこはそんなに背負いすぎず、気持ちよくプレーするためには、いわれたことをただやるだけ、という感じでやってますね」

 周りから期待されればされるほど、自分のモチベーションに変え大きな成長を続けていった桜木花道。今シーズンの晴山選手は、桜木花道の未来像になっていくのかもしれない。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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