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やはり既定路線だった? マイク・ソーシア監督の退任表明

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーズン最終戦後に今シーズン限りの退任を表明したマイク・ソーシア監督(左)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 エンゼルスのマイク・ソーシア監督が現地30日、シーズン最終戦終了後の監督会見で今シーズン限りの退任を表明した。2000年からエンゼルスの指揮を執り始めてから実に19シーズン。現役監督として最長期政権を築いてきた指揮官が遂にグラウンドを去ることになった。だが本欄でも何度か指摘している通り、ソーシア監督の退任は今シーズンの開幕前から噂されていたことだった。

 ソーシア監督は就任後2002年にチームをワールドシリーズ制覇に導くと、その後も04、05、07、08年と地区優勝を飾るなどチームを強豪チームへと変貌させた手腕を買われ、2009年1月に10年間の契約延長を結んでいた。しかしそれ以降は09年と14年に地区優勝に輝いたのみで低迷状態に突入。昨年オフは監督の要望で契約交渉は一切行わず、契約最終年を迎えた状態で今シーズンに臨んでいた。現地メディアからも「ポストシーズンに進出できなければ今シーズンで退任」という意見が出ていた。

 実際今年8月の時点で、MLB界では敏腕記者として知られるケン・ローゼンタール記者が「ソーシア監督が今シーズン限りの退任を決断し、すでに関係者にその意思を伝えた」と報じ、世を賑わせていた。ただその時は監督自ら報道を「poppycock(戯言)」と断じ、完全否定していたが、やはり報道は正しかったようだ。ローゼンタール記者はソーシア監督の退任会見後に、やや皮肉混じりに以下のようなツイートを投稿している。

 ソーシア監督の退任が既定路線だったのは、チームの対応からも窺える。会見が終了するとチーム広報はそれに合わせるかのように、チーム関係者から集めたソーシア監督関連コメント、さらにアート・モレノ=オーナーの声明を立て続けに発表している。関連コメントは元選手や元GMなど総勢12名。事前に用意しておかなければこのタイミングで発表できるわけがない。すでにチーム内では退任の方向で準備を進めていたとしか思えない。

 ただソーシア監督の退任表明は、そのまま球界からの引退を意味するのではない。現地記者らのツイートをチェックする限り、「今回の退任は監督が下した決断」(ジョン・カルピノ球団社長談)であるものの、監督自身は「自分は監督業を愛している。また次の機会が訪れるかは誰にも分からない」と話しており、監督復帰を否定していない。現時点で明らかなのはソーシア監督が来シーズンからエンゼルスの指揮をとらない、ということだけだ。

 日本のメディアの中には、ソーシア監督の退任により大谷翔平選手の起用法に影響が出るのではと危惧する声もあるが、それは心配無用だろう。監督の人事権を握っているのはビリー・エプラーGMだ。すでに同GMは「今後も二刀流で起用していのはチームがオオタニと約束したこと」と明言していることからも、チームの方針に見合った新監督を選任することになる。しかも来シーズンに関しては、大谷選手は打者とでしか出場できないことが決まっているのだから悩む必要もない。

 いずれにせよ、エンゼルスの中で一つの時代が幕を閉じた。果たして来シーズン以降にどんな未来が待ち受けているのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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