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京都ハンナリーズが昨季の韓国リーグ得点王を獲得 それでも不安が残るビッグマン不足という現状

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
入団会見に臨んだデイヴィッド・サイモン選手(左)と高田典彦球団社長(筆者撮影)

 京都ハンナリーズは20日、先に獲得を発表していたデイヴィッド・サイモン選手の入団会見を開いた。

 サイモン選手はシカゴ出身の36歳で、208センチ、116キロの体格を誇るビッグマンだ。大学卒業と同時に活躍の場を海外リーグに求め、2005-06シーズンにブルガリア・リーグに在籍したのを皮切りに、ロシア、フランス、韓国、セルビア、カザフスタンの各リーグを渡り歩いてきたベテランだ。2014-15シーズンから韓国リーグ(KBL)を主戦場としており、昨シーズンは在籍2年目のアニャンKGCで得点王、ブロックショットのタイトル2冠に輝いている。

 ハンナリーズはシーズン開幕を間近に控え、ビッグマンの補強が急務だった。昨シーズン得点(16.8得点)、リバウンド(9.4リバウンド)でともにチーム1位だったジョシュア・スミス選手が富山グラウジーズに移籍し、さらに日本人ビッグマンの永吉佑也選手が自ら起こした不祥事で1年間の公式戦出場停止処分を受けてしまい、フロントコート陣が壊滅状態だっただけに、ようやく信頼できるビッグマンの補強に成功することができたわけだ。

 「京都の一員になれ、こうして日本でプレーする機会を得たことをとても嬉しく思い、興奮しています。自分のベストを尽くし、少しでもチームの助けになれればと思っています。

 自分は多様的なビッグマンだと思っています。昨シーズンもそうでしたが、得点を挙げることもできますし、リバウンドでもしっかり仕事ができます。とにかくチームが求めるプレーを何でもこなしていけると思っています」

 会見上で自分のセールスポイントを聞かれたサイモン選手は、以上のように答えた。会見後には早速ハンナリーズの一員として、古巣のアニャンKGCとの練習試合に出場。前半だけ観戦してきたが、成績通りの質の高いプレーを披露していた。

 昨シーズンのスミス選手はパワーを前面に出したポストプレーを武器にしていたが、体重が重い分スピードと走力にやや難があり、シュートレンジも決して広くはなかった。だがサイモン選手は昨シーズンKBLで151本の3ポイント(成功率は33.8%)を放っているように、実際にプレーを見ていてもシュートレンジは広く、ポストプレーからオープンの選手を探しパスを出す能力にも長けていた。

 さらに前日にシカゴから来日したばかりというコンディションを考慮に入れても、ずば抜けたスピードとまではいえないが、走力は十分にあり、ハンナリーズのアップテンポなプレーにも順応していた。昨シーズンはスミス選手が苦手にしていたピック&ロールやトランジションのディフェンスにも対応していけそうで、プレーの幅という面ではスミス選手以上に計算できそうだ。

 とはいえ、シーズンを通してフロントコートをサイモン選手1人に任せることは絶対に不可能だ。他チームではフロントコートに「外国人選手2人+日本人ビッグマンもしくは帰化選手」という布陣をとっているのが一般的だ。だがハンナリーズは、もう1人の外国人選手ジュリアン・マブンガ選手がビッグマンというよりも試合をコントロールするオールラウンド・タイプで、現時点で本当の意味でのビッグマンはサイモン選手しか存在していない。現状ではサイズは小さいもののパワーのある晴山ケビン選手(191センチ、93キロ)と、昨シーズンの出場時間が79分52秒と経験不足は否めない頓宮裕人選手(198センチ、100キロ)がサイモン選手のフォローをしていくしかないだろう。

 その一方で、現時点でのハンナリーズの登録選手は永吉選手を含めて10人しかない(坂東拓選手を契約解除したため)。あと2人まで補強できる余裕がある。昨シーズン念願だったチャンピオンシップ進出を果たした日本人選手は全員が残りバックコート陣はすでに安泰なだけに、残り2枠でどんなビッグマンをリクルートできるかが今シーズンのカギを握ることになる。

 浜口炎HCも厳しい現状を踏まえた上で、以下のように説明している。

 「できれば(もう1人)大きくて走れるビッグマンがいれば対応できるとは思っているんですが…。何人か候補はいたんですけど、それは上手くいかなくて、今現在は候補がいない状態です。ただBリーグのルール上10人はベンチにいれなかればいけないので、まずは日本人選手を1人加えないといけないですね。そこ(永吉選手)の代わりになる選手は絶対にいないので、でも何とかロースターを揃えてとは思っています。

 確かにフロントコート陣は厳しいというのが現実でどう戦っていくのかと…。ただ正直なところだとやっぱり(不祥事が続いた)問題が大きかったので、練習を一生懸命やっていくとか、何とかチームみんなが1つの方向に向かえるような状態を作っていくことの方が今は精一杯な感じなので、まだどうやって戦っていくのかまでは見えてないというところですね」

 歴戦を経験してきた浜口HCといえでも、今シーズンは相当厳しい船出を覚悟しているようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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