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7月は打率2割3厘に終わった大谷翔平の“ある”変化

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
故障者リストから復帰以降明らかな打撃不振に苦しむ大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月3日に故障者リスト(DL)から外れ、まずは打者として復帰を果たした大谷翔平選手だが、ここまで明らかな打撃不振に苦しんでいる。

 7月最後の試合となった31日のレイズ戦でも「2番DH」で出場し、8回の第5打席で鮮やかな中前打を放ったものの、5打数1安打に終わり、チームも敗れ去った。この結果7月の月間打率は自身最低の.203(64打数13安打)に留まり、月別三振数も自己最多の23を数える。DL入りする前は.289あった打率も.258まで降下している。

 どんな打者でもシーズンを通して好調を維持するのは難しい。MLB1年目の大谷選手なら尚更だろう。だがデータをチェックしてみると、DL前後の打撃傾向が明らかに変化しているのだ。“ある”側面から見ると、まるで正反対になってしまっているのは気になるところだ。

 MLB公式サイトの1つで、トラッキングシステムの『Statcast』で得たデータを公開している『Baseball Savant』を利用して大谷選手のDL前後の打球方向チャートを調べたところでは、安打が飛んでいる方向がDL前後ではかなり違っているのだ。

 DL入りする前は安打は全方向に飛んでいるのだが、単打、長打で分けてみると、単打はセンターから右翼方向に集中している(単打15本、長打6本)一方で、逆に長打は明らかにセンターから左翼方向の方が多い(単打2本、長打9本)のがわかる。

 これに対しDL復帰後は、センターから右翼方向の安打は単打2本、長打7本に対し、センターから左翼方向の安打は単打2本、長打1本と、明らかに打球が右翼方向に集中してしまっているのだ。つまり現在はDL入り前のようにセンターから左翼方向に長打を打つのが難しく、大谷選手本来の打撃ができていないことを意味している。これは彼の調子が落ちているのもあるだろうが、それ以上に相手投手の攻め方に影響があると見るべきだろう。

 今度はDL前後の相手投手の球種及びコースをチェックしてみると、やはりその傾向に変化が確認できる。DL入りする前は、大谷選手の内角を中心に攻める傾向が強く、球種はスライダーやフォーシームの速球系がよく使用されていたのだが、DLから復帰して以降は内角への意識が薄れゾーン全体にボールを散らし、球種も明らかにシンカー、カーブが増えてきている。まさにこうした相手投手の攻め方の変化が大谷選手を苦しめ、打撃の調子も落ちてきてしまったのだろう。

 現在のMLBでは様々なデータを駆使して相手選手の攻略法を見出そうとする。相手チームも大谷選手が離脱している間に相当研究してきたというわけだ。今度は大谷選手が相手投手の変化を理解し、新たな突破口を見つけていくしかない。そうした対応力を身につけなければMLBで成功することはできない。

 今後の大谷選手の巻き返しに期待したい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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