NBAに大きく前進した渡邉雄太が結んだ2ウェイ・コントラクトとは?

ネッツの一員としてNBAサマーリーグに参戦していた渡邉雄太選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NBAのメンフィス・グリズリーズは現地20日、今年6月にジョージワシントン大を卒業し、今月ラスベガスで実施されていたNBAサマーリーグにブルックリン・ネッツの一員として参加していた渡邉雄太選手と『2ウェイ・コントラクト』を結んだと発表した。これにより田臥勇太選手が2004年に日本人として初めてNBAの公式戦出場を果たして以来、実に14年ぶりの日本人NBA選手誕生という夢が大きく前進することになった。

 すでにバスケ・ファンの間では有名な存在ではあるが、簡単に渡邉選手の略歴を紹介しておこう。香川県出身の23歳で、身長206センチとバスケ選手として恵まれた身体を有している。尽誠学園高校時代は2011年、12年と2年連続でウィンターカップ準優勝を果たし、全国ベスト5にも選出された逸材だった。高校卒業後は米国留学を決断。大学準備校(通称「プレップ・スクール」)を経て、NCAAディビジョン1のジョージワシントン大に進学。同校で4シーズンを過ごし、今年6月に無事卒業していた。

 卒業後はNBA入りを目指し各チームのドラフト前ミニキャンプに参加していたが、指名を受けることはなかった。その後は前述通り、ネッツでサマーリーグのロースター入りを果たし、現地メディアから取り上げられるほどのプレーを披露したことで、念願が叶いグリズリーズとの契約に至ったのだ。

 だが今回渡邉選手が結んだ『2ウェイ・コントラクト』は、“正真正銘”のNBA選手になれたことを意味するものではなく、実質はまだ田臥選手と肩を並べたわけではない。現時点で渡邉選手が来シーズンNBAの公式戦に立てるという保証はまったくないのだ。

 実はこの契約システムは、昨シーズンから登場したばかりのものだ。NBAのマイナーリーグの組織改編により誕生したものだといっていい。これまでNBAは傘下のマイナー組織として2001年に『ナショナル・バスケットボール・ディベロップメント・リーグ(通称NBDLA、後にNBADリーグに改称)』を立ち上げていたが、昨シーズンから大幅にチーム数を増やし(2001年は8チームだったが26チームに拡大し、今シーズンから27になる予定)、名称も『NBAGリーグ』と変更され、各チームがNBA各チームの管轄下に置かれるようになり、より明確なマイナーリーグ組織が確立された(将来的にはNBA全30チームが管轄チームを持てることを目指している)。

 これに伴いNBAと選手会は昨シーズンから新しい統一労働協約を施行させ、これまで15人だった登録選手枠を変更し、『2ウェイ・コントラクト』で2選手を加えることができるようになったのだ。だがこの2選手はいわゆる“マイナー選手”扱いで、基本的にはチーム傘下のGリーグでのプレーが保証されているだけで、逆にNBAへの昇格に関しては何の保証もないし、たとえ昇格できたとしてもNBAに在籍できる期間は最大で45日間に限定されるという厳しいものなのだ。

 つまり現在の渡邉選手はグリズリーズの登録枠に入れたものの、あくまで“16番目もしくは17番目”の存在でしかなく、現時点で確定しているのはチーム傘下のGリーグのチーム(メンフィス・ハッスル)で出場できる権利が与えられたに過ぎない。もちろんGリーグで活躍できなければ、NBAに昇格できないままシーズンを終える可能性は十分にあるし、場合によっては解雇される危険性すらもあるのだ。

 だが『2ウェイ・コントラクト』を結べたということはそれだけチームから期待されている証拠であり、NBAチームとの契約がないまま直接Gリーグ入りする選手と比較すれば、はるかにNBAに昇格できる可能性が高いのは間違いない。

 とりあえず渡邉選手は契約を結べたことで、この夏はグリズリーズの施設で他の若手選手たちと一緒に練習でき、まずは本格的な戦いが始まるトレーニング・キャンプに備えることができる。もちろんキャンプの出来次第でプレシーズン試合の出場機会がたくさん得られるだろうし、場合によってはシーズン開幕前に本格的なNBA契約に変更されることだってあるかもしれない。

 いずれにせよ来シーズンのNBAに、相当な楽しみが加わったことだけは間違い。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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