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ギャレット・リチャーズの右ヒジじん帯再負傷が大谷翔平に与える影響は?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
再び右ヒジの内側側副じん帯損傷でDL入りしたギャレット・リチャーズ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 エンゼルスが現地11日、ギャレット・リチャーズ投手が再び右ヒジ内側側副じん帯を損傷したため、同投手のDL入りを発表した。リチャーズ投手は10日のマリナーズ戦に先発したが、右上腕の違和感で3回途中に緊急降板を余儀なくされ、翌日にMRI検査を受けた結果じん帯損傷がみつかったものだ。

 リチャーズ投手といえば2014年シーズンの開幕から先発ローテーションに定着し、2年連続2桁勝利を挙げる活躍をみせ主力先発陣として期待されていた。しかし16年シーズン途中に内側側副じん帯損傷がみつかり戦線離脱。チームの方針としてトミージョン手術を回避し、PRP注射と幹細胞注射による治療法で復帰を目指してきた。しかし17年シーズンは上腕二頭筋に異常を起こし9月まで投げることができず、わずか6試合の登板に留まっていた。

 今シーズンは完全復帰を目指し開幕から先発ローテーションを守って投げてきたが、シーズンを乗り切れずに再びじん帯を損傷してしまったのだ。リチャーズ投手本人の失望感は相当なものだろうが、それと同時にチームに与えた衝撃も大きかったはずだ。まだ今後の方針については明らかになっていないが、今度はトミージョン手術を受けるという選択肢が大きくなったのではないだろうか。

 今回のリチャーズ投手の再負傷で、やはり気になるのが大谷翔平選手だろう。現在はすでに打者として復帰しているものの、右ヒジ内側側副じん帯損傷からチームが下した判断、その治療法までの過程がリチャーズ投手とまったく同じという点だ。このまま投手としてリハビリを続けていって、リチャーズ投手と同じ道を歩む危険性はないのだろうか。

 もちろん同じじん帯損傷といっても、損傷箇所、損傷度まで同じ訳ではない。治療法の効果も違ってきて当然だろう。しかし復帰時期の診断やリハビリメニューを決めるのは、同じエンゼルスのチーム医師であり、メディカル・スタッフなのだ。

 あくまで結果論でしかないが、リチャーズ投手が昨年上腕二頭筋の異常で長期離脱を余儀なくされた際も、エンゼルスはじん帯損傷との関連性を完全否定し、さらに右ヒジは万全と診断し、実戦復帰を許可しているのだ。にもかかわらず短期間で再びじん帯を損傷し、結果的に16年にトミージョン手術を受けていた場合のリハビリ期間より長期の戦線離脱を強いられることになってしまったのだ。メディカル・スタッフの根本的な治療方針が正しかったのかが問われかねないだろう。

 大谷選手のみならず、じん帯を損傷したすべての投手にとって、トミージョン手術を受けずに完全復活できるのが理想的なのは至極当然だ。だがその一方で、今回のリチャーズ投手のように再発を繰り返し手術を受けるよりも長い期間実戦復帰できないのであれば、その選択は100%正しいものではなくなってしまう。

 今後はリチャーズ投手に対するチームの方針に留まらず大谷選手のリハビリ計画まで巻き込んで、メディアの間で議論が巻き起こりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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