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オリックスの大砲クリス・マレーロが失うことのない飽くなき探求心

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
友人のメヒア選手が見守る中打撃練習を行うクリス・マレーロ選手(筆者撮影)

 オリックスの大砲の1人、クリス・マレーロ選手が開幕から順調に本塁打を打ち続けている。5月2日の西武戦では4回に今シーズン8号目となる2点本塁打を放ち、チームの逆転劇の口火を切ることに成功した。本塁打争いでも、西武の山川穂高選手の12本に次ぎ両リーグ通じて2位につけている。

 昨年はシーズン途中の5月にオリックスと契約し、途中加入にも関わらず打率.290、20本塁打、50打点を残し、今シーズンはステフェン・ロメロ選手とともに打線の主軸を任されている。だがチームの期待通り本塁打を積み上げているものの、マレーロ選手自身は自分の打撃に決して満足しているわけではない。

 「もっといいバッティングができるはずだ。今は打席を積み重ねながら、調子を上げていっている。自分の余計なプレッシャーをかけるつもりはないが、本塁打以外でももっといい成績を残せると思っている。とにかく毎日練習して、着実に良くなってきていると感じている」

 マレーロ選手が指摘するように、8本塁打を放っている一方で、打率は.227と決して高くはない。特に得点圏打率は.174に留まっており、チームへの貢献度を考えればかなり物足りない。それは本人も十分に承知しているからこそ、上記のような発言に繋がっているのだ。

 ただバッティングを上向かせたいというマレーロ選手のひたむきな姿勢は、日々の練習を見ていてヒシヒシと伝わってくる。ティー・バッティングやトス・バッティングをしている最中もこまめにグリップの位置やスイングの軌道をチェックし、時には自らコーチにアドバイスを求め打撃フォームを確認している。野球に取り組む姿勢は日本人選手に負けないくらい真面目だ。

 「今は感覚的な部分を良くしようとしている。どのボールにもしっかり対応できバットを出せるようなポジションを確認している。技術というよりも感覚的なものだ。すべての打者が日々そうした作業を続けているんだ」

 よく「バッティングは水物」だといわれる。長いシーズンをプレーする中で、体調の変化や疲労の蓄積でバッティングの感覚は日々変化していく。だからこそマレーロ選手は常にバッティングの感覚を磨き、日々の確認作業を怠ろうとしないのだ。ところでマレーロ選手は本塁打を打つ上で必要な要素は何だと考えているのだろうか。

 「ハンドと動体視力だ。現代の投手はストライクゾーンに様々な球種を投げ分ける。それをしっかり見極める動体視力と、しっかりミートする準備(バットを運ぶ手の動き)が必要になると思う」

 オリックスにとってもマレーロ選手の安定した打撃力は必要不可欠だ。本塁打のみならず、更なる打撃アップに期待がかかるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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