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今季初めて打順変更されたジャンカルロ・スタントンは現状を打開できるか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
19日のブルージェイズ戦でホーム戦5試合ぶりに安打を放ったスタントン選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年はMLB最多の59本塁打を放ち、大きな期待を受けてヤンキースに移籍してきたジャンカルロ・スタントン選手が、開幕から厳しい状況に立たされている。その象徴的な場面がホーム開幕戦となった4月2日のレイズ戦だった。

 3月29日のブルージェイズとのシーズン開幕戦で2本塁打を放ち、ヤンキースとして鮮烈デビューを飾ったスタントン選手。ピンストライプに身を包み地元ヤンキー・スタジアムに初めて立つこの日は、彼にとって最高の檜舞台になるはずだった。しかしMLB9年目で自身初の5打数5三振に終わると、ファンは容赦なくブーイングを浴びせたのだ。まさに屈辱的なホーム・デビューと化してしまった。

 さらに追い打ちをかけるように、4月8日のオリオールズ戦でも7打数無安打5三振に終わり、ファンの不満はさらに増長していった。スタントン選手に対する期待が高かった分、そのかけ離れた成績に失望感が高いのは納得できる。しかし日頃は辛辣なニューヨークのメディアも、開幕直後のブーイングに同情的な意見が出ていたくらいだ。

 それ以降もスタントンの打撃は“逆・内弁慶”状態に陥ってしまっている。19日のブルージェイズ戦を迎えるまで16試合に出場し、遠征試合8試合では31打数10安打で打率.323(2本塁打7打点)を残している一方で、ホーム試合8試合になると35打数3安打で.086(1本塁打3打点)と完全に不振を極めている。

 そんな状態で迎えた19日のブルージェイズ戦で、アーロン・ブーン監督は初めてスタントン選手の打順を入れ替えた。これまでずっと「3番」を任せていたのだが、「4番」に変更したのだ。気分転換が目的なら下位に回すという考え方もあるだろうが、あくまで指揮官は「状況によって3番、4番、5番にするだろうが、下位に回る予定はない」クリーンアップで起用する方針を明らかにしている。

 そんな打順変更が功を奏したのか、5回2死一、三塁で迎えた第3打席で二塁内野安打を放ちホーム試合としては5試合ぶりに安打を放ったのだ。バットの先に当たった一打は、決してスタントン選手も満足できる内容ではなかっただろう。しかし内野ゴロでも懸命に一塁ベースまで全力疾走したからこそ生まれた安打だった。チャンスを広げる一打に、ファンからも大きな歓声が上がっている。

 「まだシーズンは始まったばかり。前に進むだけだ。ファンの気持ちも理解できる。今は自分のしていることを把握しながら打開できる道を探していくしかない」

 スタントン選手が話すように、ファンからどう思われようとも前を向いて打席に立ち続けるしかない。もちろん結果が出るようになれば、ファンは再び拍手喝采でスタントン選手を迎えてくれるようになる。すでに十分な実績を積み上げた選手であり、些細なことがきっかけで復調することだってある。そもそも彼にとってベストシーズンだった昨年も、開幕16試合までの成績は打率.267で5本塁打11打点と決して突出した成績ではなかったのだ。

 今回の打順変更が現状打開への一歩となるのか。1日も早く“ヤンキー・スタジアムの呪縛”から解放され、スタントン選手の豪快な本塁打が見られる日を待ち侘びるばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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