大谷翔平の投打の新フォームにモデル選手が存在する?

開幕直前に打撃フォームを変更した大谷翔平選手(写真:Shutterstock/アフロ)

 シーズン開幕から投打ともに衝撃的な活躍をみせている大谷翔平選手。日本人メジャー選手として最速&最年少で週間MVPを獲得するなど、今後の活躍次第では米国でも大谷フィーバーが巻き起こりそうな勢いだ。

 開幕前はあまりの成績不振に、米メディアの中から開幕メジャー入りに懐疑的な見方もあったが、そうした評価は完全に雲散霧消。今や大谷選手の実力を疑うものは誰もいなくなった。むしろ短期間での変貌ぶりに驚嘆の声が挙がり、改めて大谷選手の適応能力の高さがクローズアップされている。

 彼の適応能力を理解する上で繰り返し指摘されているのが、開幕直前に断行した打撃フォームの変更だ。スプリングトレーニング中は日本ハム時代と同じ右足を上げるステップ打法を続けていたが、突如右足を上げないノーステップ打法(すり足打法)に切り替えたのだ。その結果は説明するまでもないが、開幕戦で初打席&初安打を記録し、その後3試合連続本塁打を記録するまでに至っている。

 また本欄でも指摘しているが、投球面でも整形外科医による医学的見地からフォームに変化が見られ、体幹の使い方が日本ハム時代とは違ってきている。つまりシーズン開幕を迎えるに当たり、投打ともに新フォームで臨んでいるのだ。

 この大谷選手が取り入れた新フォームをチェックしているうちに、自分の頭の中で1つの疑問が浮かび上がってきた。それは新フォームにモデル選手がいるのではないか、ということだ。それほど投打ともに新フォームに似ている選手がMLBに存在しているのだ。順を追って説明していこう。

 まず打撃フォームだが、以下の2つの動画をチェックしてほしい。

 上の動画は大谷選手で、下は開幕から本塁打を量産し、現在本塁打部門でMLBトップを走るブライス・ハーパー選手だ。ご覧の通り、右足の使い方が非常に似ているのが解るだろう。ただハーパー選手は常にノーステップではなく、相手投手に合わせて足を上げることもあるのだが、MLB屈指のスラッガーが採用しているくらい、ノーステップはMLBの投手に対しタイミングが合わせやすいということなのだろう。

 次に投球フォームについてだ。同様に2つの動画を見比べてほしい。

 比較しているのはレッドソックスのデビッド・プライス投手だ。プライス投手といえば、現在MLB4位の年俸3000万ドル(約32億円)を誇るMLB屈指の最強左腕の1人だ。大谷選手とは左右の違いがあるが、走者がいなくても常にセットポジションで投げ、足を上げてから前に踏み出す直前に体幹を二塁方向に倒す一連の動作(倒れる角度が違うが…)がかなり似ていないだろうか。

 実は大谷選手の投球フォームの変化に関する記事を書くため何度も彼のフォームを見返しているうちに、自然とプライス投手が脳裏に浮かび上がってきた。それほど自分の中では2人の投球フォームがオーバーラップしていたのだ。

 もちろん大谷選手がハーパー選手、プライス投手のフォームを参考にしているかどうかは定かではない。ただ彼が取り入れた新フォームが、投打ともにMLBを代表する強打者、好投手に似通っているというのは決して悪い傾向ではないだろう。MLB挑戦1年目の23歳の若者が新しいものをどんどん吸収しながら自分のスタイルに合ったものを取捨選択していく作業は、一流アスリートになっていく上で必要なことだ。まだまだ成長過程にある大谷選手の更なる進化が楽しみで仕方がない。

 ところで多少余談になるが、最近日本のTVスポーツ番組で、身体の勢いを使わないノーステップ打法でも大谷選手の飛距離がずば抜けている理由を探ろうとしていたが、あまり明確な答えは見出せていなかったように思う。しかし彼の経歴を考察すれば、答えは自然に導き出せるのではないか。大谷選手の打球の飛距離と球速が格段に伸びたのは2016年シーズンだった。その開幕前のオフに実施していたのがダルビッシュ有投手のアドバイスの元で行った肉体改造だ。つまり筋力アップが投打ともに好影響をもたらしているということだ。

 MLB取材をしていて最大の恩恵は、試合前後にクラブハウスに入室し選手たちの取材ができることだ。自分も多くの選手たちの肉体を間近でチェックすることができた。そうした中で実感できたのは、長距離打者、速球派投手に共通しているのが発達した筋肉だ。中でも背筋の付き方が半端ではなかった。

 MLBファンなら理解できると思うが、打者なら相当の筋肉を身にまとっている。実は投手も例外ではない。これまでの経験上、身長180センチ前後と小柄ながらも150キロ以上の速球を投げる投手たちの背筋は打者と変わりなかったし、現在MLB最速を誇るアロルディス・チャプマン投手に至っては、たぶん自分が見てきた中で打者を含めても最強の背筋をしていた。あれほどの分厚い背筋を見たことがなかったので驚きすら感じるほどだった。

 そう考えると、現時点ですでにMLB屈指の速球派の仲間入りをしている大谷選手なのだから、その背筋力の凄さは推して知るべしだろう。その並外れた背筋力があるからこそノーステップ打法でもバットスイング、飛距離が落ちることがなかったと考えるのが妥当ではないだろうか。

 決して的外れな推論ではないと思うが、読者の皆さんはどう思われるだろうか…。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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