予選リーグ敗退もSC軽井沢クラブが誇るべきもの

2013年の世界選手権に出場していた当時のSC軽井沢クラブ(筆者撮影)

 カーリングの男子代表として平昌五輪に出場していたSC軽井沢クラブが予選リーグ最終戦で韓国に敗れ、あと一歩のところで準決勝進出を懸けたタイブレイク進出を逃した。同じ日に女子代表のLS北見が同じく予選リーグ最終戦に敗れながらも日本カーリング史上初の準決勝進出を決めているだけに、本当に残念でならない。

 2016年の世界選手権で日本チームとして初の銀メダルを獲得し、今回の平昌五輪でも準決勝進出を果たしたLS北見が賞賛に値するのは言うまでもない。だがその一方で予選リーグで敗退したSC軽井沢クラブも、LS北見に匹敵する評価を受けてもいいのではないだろうか。

 これまで日本のカーリングは女子ばかりが注目されてきた。1998年に長野五輪から正式種目になって以降、すべての五輪に出場し続けている女子代表に対し、男子代表は自国開催の長野五輪に出場して以降、今回の平昌五輪まで一度も出場できなかったことを考えれば注目度に差が生じてしまうのは仕方がないことだ。

 しかも女子代表は本橋麻里選手に代表されるように、カーリング競技とは別の部分(アイドル的な存在)で脚光を浴びてきた。今回のLS北見に関しても、スキップの藤澤五月選手が韓国で美人選手として評判になっているとか、試合中のハーフタイムにチームが食しているメニューとか彼女らの会話の方言などがメディアを賑わせている。

 競技としての実力を備えている上、さらにメディアが飛びつくような話題性があるのは重々承知しているが、それでも今回はSC軽井沢クラブも同じ五輪に出場していることを考えれば、スポーツライターの立場からすると両者を取り上げる報道格差に疑問を感じざるを得ない。男子代表として自国開催以外で初めて五輪出場を果たしたSC軽井沢クラブの功績をもう少し評価すべきではないだろうか。

 実は昨年まで米国で取材活動をしていた中で、SC軽井沢クラブ、LS北見ともに現地で取材した経験がある。LS北見は2016年の世界選手権、SC軽井沢クラブは2013年の世界選手権を現地で取材させてもらった。両チームとも通信社の契約記者として取材に回っていたのだが、LS北見の時は自分以外に某全国紙の記者が取材に来ていたし、さらにNHKもアナウンサーを派遣し中継を行っていた。一方のSC軽井沢クラブを取材していたのは自分1人だけだった。

 前述通りLS北見は同大会で銀メダルを獲得する活躍をみせ日本で話題になった一方で、SC軽井沢クラブは予選リーグで敗退しており、さほど関心を集めることもなかった。しかし予選リーグで彼らが挙げた3勝(8敗)のうち2勝は同大会で決勝に進出したカナダとスウェーデンを破ったもので、現場で取材していて相当に興奮させてもらったのを今でも鮮明に憶えている。

 また現場取材が1人だけだったこともあり、SC軽井沢クラブの各選手たちからしっかり話を聞ける機会も得て、スポンサー集めを含めマイナー競技ならではの難しさなど、かなり本音の部分を聞かせてもらった。彼らのみならず取材を通してフリースタイルスキーのモーグルやエアリアルでワールドカップに出場するような選手たちからも、アルバイト生活を強いられるような厳しい現状を聞かされていただけに大きな驚きはなかったとはいえ、彼らの厳しい現状を理解することはできた。

 それでも当時のSC軽井沢クラブの選手たちは明るかった。スキップの両角友佑選手も嬉しそうに以下のように話してくれた。

 「今年軽井沢に通年で使用できるカーリング専用のリンクがオープンするんです。ようやく他に負けないくらい練習できる環境が整います」

 両角選手が話してくれたように2013年4月に「軽井沢アイスパーク」がオープンし、1年を通して練習を続けながら海外遠征で国際試合の経験を積める環境がようやく整った。当時の彼らはソチ五輪出場を目指して頑張っていたが、残念ながらその夢を叶えることはできなかった。しかしその後も同じメンバーでさらに経験を積み重ねながら着実に実力を増していき、遂に2016年の世界選手権では男子チームとして初めての4位入賞を果たしている。

 全国屈指の実力を備えているとはいえ注目度の低い男子カーリングのクラブチームが、ソチ五輪出場を逃し改めて4年後の平昌五輪出場に目標を切り替え、スポンサーを説得しながらチーム編成を変えずに活動を続行していくのは相当な苦労があったはずだ。その中で念願の五輪出場を果たし、しかもギリギリまで準決勝進出を争ったのだ。それだけで十分に健闘を称えていいはずだ。

 「女子だったらもう4年と言いやすいのかもしれないですけど、僕たちのチームはまだ話してないですけど、この後4年間もう1回北京に向かって頑張るのかどうかチームが決めなければいけないと思いますし、それをサポートしてくれるスポンサーの方々にもう一度お願いしないといけないですし、そういう環境が整えば、自分たちはこの経験を生かして次こそ表彰台に上る4年間になるんじゃないかと思います」

 五輪を戦い終えTVインタビューに答えた両角選手の言葉が、今後のSC軽井沢クラブの行く末をすべて物語っている。結果を残し注目を集め続ける女子カーリングのようにスポンサーを集めるのは容易ではない。だがSC軽井沢クラブの野望が五輪出場で叶ったわけでもない。

 今後も彼らが引き続き活動を続けられることを切に願うばかりだ。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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