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ドジャース中継ぎ陣はこのまま崩壊してしまうのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ワールドシリーズ第5戦でポストシーズン初失点を喫した前田健太投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 29年ぶりにワールドシリーズ進出を決めたドジャース。地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズを7勝1敗で勝ち上がるなど、ポストシーズンで快進撃を支えたのが中継ぎ陣の奮闘だ。この間中継ぎ陣の防御率はポストシーズン出場チーム中ダントツトップの0.94と絶対的な安定感を誇り、チームを勝利に導いてきた。

 しかしワールドシリーズに入り、その中継ぎ陣が明らかに崩壊現象が起こってしまった。その象徴的な試合が29日の第5戦だった。試合は序盤から優勢に進めながら終盤に追いつかれ、最後は延長戦の末サヨナラ負けを喫した。ポストシーズン8試合目で初失点を喫した前田健太投手をはじめ、好投を続けてきたブランドン・モロー投手、ケンリー・ジャンセン投手らが次々に失点を重ねてリードを守りきれなかったたためだ。もちろんワールドシリーズの中継ぎ陣の防御率も5.32にまで落ち込んでいる。

 原因は明らかに中継ぎ陣のフル稼働だろう。ポストシーズンに入り、先発陣の平均投球イニング数は球界を代表するクレイトン・カーショー投手を擁しながらも5イニングに留まっている。短期決戦ということでデーブ・ロバーツ監督は公式戦以上に早めの継投策をとっているため、その分中継ぎ陣に大きな負担がかかってしまっている状況なのだ。

 ここまでドジャースはポストシーズンで計13試合戦う中で、モロー投手が最大の12試合に登板し、それ以外でもジャンセン投手11試合、トニー・ワトソン投手10試合、前田投手8試合──と主力クラスはほぼ連投を強いられている状況だ。これではコンディションを維持するのはかなり難しいと言わざるを得ない。

 ただアストロズの中継ぎ陣も盤石でなく、シリーズの中継ぎ防御率はドジャースを下回る7.58の状況だ。両チームともに先発投手の出来が良くなければ、今後も第5戦のような打撃戦になっていくだろう。今シーズンMLBトップのチーム打率、得点、長打率を残したアストロズ相手にボクシングでいうところのガード無しの殴り合いをするのは、明らかにドジャースには不利になってしまう。否応なしに中継ぎ陣の奮起に期待するしかない。

 30日のオフでどこまで彼らが回復できるかが大きなカギを握ることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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