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青木宣親がDFAされた理由と不安な今後

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
28日に40人枠から外されたブルージェイズの青木宣親選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ブルージェイズが28日、青木宣親選手を40人枠から外す措置(通称DFA)を行ったと発表した。

 詳細を報じたMLB公式サイトでも「unexpected roster move(予期せぬロースター異動)」と表現しているように、地元メディアにとっても青木選手のDFAは驚かさせる措置だった。

 その一方で同記事では、今回の措置の理由についてしっかりと解説してくれている。まずジョン・ギボンズ監督の説明を聞いて欲しい。

 「簡単(な判断)ではなかった。彼はチームのためによくやってくれていた。ただ我々は投手の補強が必要だった。(MLB球界では)こうした事態が繰り返されてきたように、どうしても中継ぎ陣がもう1人必要になった。だが数日後にはロースターが拡大されるからね」

 青木選手のDFAに伴い、レオネル・カンポス投手が昇格してきた。ギボンズ監督が説明するように、ここ最近リリーフ陣が先発に回るなどして投手陣全体がやや機能不全に陥っており、特にリリーフ陣を立て直す意味でも投手陣の補充が必要となっていた。そこで1人野手を減らさなければならず、青木選手がその役目を担うことになったというわけだ。

 本来ならわざわざDFAしなくても単純にマイナーに降格させればいいと思われそうだが、青木選手の場合はすでにマイナーに降格させるオプション権がなくなっているため(MLB在籍期間が3年以上の選手)、青木選手のような立場の選手を25人枠から外すためにはDFAを行うしかなかったのだ。

 とりあえず青木選手はDFAと同時にウェーバーにかけられており、まずはウェーバーの動向を見守るしかないのだが(ウェーバー期間内に手を挙げるチームがいれば、自動的に移籍が決まるため)、ギボンズ監督が最後に「数日後にロースターが拡大されるから」と話しているように、チームは青木選手を“戦力外”にしたわけではまったくない。

 というのも、9月1日からロースター枠が拡大され、40人枠に入っている選手なら何人でもMLB公式戦の出場枠(8月31日までは25人に制限)に入れることが可能になる。さらに今回青木選手はDFAされた一方で、チームは40人枠に新たな選手を加える措置は行っていない。つまりチームとしては、ウェーバーがクリアになった時点で青木選手を再び40人枠に戻し、そのままチームに合流させる方針ということなのだ。

 また他チームも9月1日以降から、ロースター枠拡大に伴い、多くの有望若手選手を昇格させるのが通例で、プレーオフ争いを続けるチームが戦力補強を考える以外で、この時期に他チームから選手獲得に動くチームはほぼ皆無だ。そう考えると、ウェーバー中の青木選手に手を挙げるチームはかなり少ないことが予想され、このまま自動的にブルージェイズ残留という可能性が相当に高いといえる。

 しかしチームに残れたとしても、青木選手が置かれる状況はさらに厳しくなりそうなのだ。すでに地区最下位に沈んでいるブルージェイズは9月1日以降、来シーズンを見据え積極的に若手選手を起用していく方針のようで、ギボンズ監督も以下のように説明している。

 「多分数人の外野手を昇格させるだろう。そうなってくると、さらに出場機会が減ってしまう」

 インフルエンザを発症した影響もあり、ブルージェイズ移籍後はわずか12試合の出場に留まっていた青木選手。このままチームに残れても出場機会はさらに制限されることになってしまう。

 もちろん青木選手はウェーバーがクリアになった時点でチームに残留する必要は無く、自らの意志でFAになる道も選択できる。だがマイナーリーグのシーズンが終了し、ロースター枠が拡大する9月に新たなチームを探すのは決して懸命な選択とは思えない。

 いぜれにせよ青木選手にとってかなり厳しい9月が待ち受けているようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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