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111年ぶり!ドジャースのリッチ・ヒルが9回までノーヒットノーランを演じながら敗戦投手に

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
打線の援護がなく大記録を不意にしたリッチ・ヒル投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLB史上でも前代未聞の悲劇が起こってしまった。

 8月23日のパイレーツ対ドジャース戦。ドジャースの先発は37歳のベテラン左腕のリッチ・ヒル投手だった。今シーズンはここまで18試合に先発し、9勝4敗、防御率3.54とまずまずの成績を残しているが、完投は一度もなかった。

 だがこの日は試合開始からテンポ良い投球を披露した。相手先発のトレバー・ウィリアムス投手も強力ドジャース打線を相手に好投を演じ、白熱した投手戦が繰り広げたれた。

 0-0の均衡が続く中、気づけばヒル投手は8回まで完全試合を続ける。ここまで球数は87球。十分に続投できる状態だった。

 しかし9回にまず1つ目の悲劇が訪れる。先頭打者が一塁失策で出塁し、完全試合が途絶えてしまったのだ。しかし後続をしっかり抑えて無失点に切り抜け、ノーヒットノーランは継続することに成功した。本来ならここで快挙達成のはずだが、試合は0-0のまま延長戦にもつれ込んでしまった。

 そして10回もヒル投手は続投した。先頭打者で迎えたのが2番ジョシュ・ハリソン選手。カウント2-1から投げた4球目は真ん中低めに入った88マイルの真っ直ぐだった。ハリソン選手がすくい上げるように放った打球はPNCパーク左翼席ギリギリに飛び込んでいった。今シーズン16号は記念すべき決勝サヨナラ本塁打となった。

 打球の行方を確認すると、ヒル投手はややうなだれながらベンチに引き上げていった。今シーズン初の完投登板は99球の熱投も稔らず、大記録を逃したばかりか敗戦投手になる悔しい試合になってしまった。

 スポーツ関連の記録を扱う『エリアス・スポーツ』によれば、9イニング以上を投げ1安打以下で敗戦投手になったのは、1906年(明治39年)のレフティ・レイフィールド投手以来の出来事だという。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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