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川崎宗則が登録抹消になった意味を真剣に考えよう!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
帰国後も安定した守備を披露していた川崎選手だが…。

 川崎宗則選手はソフトバンクに復帰して以降、彼が5年間アメリカで経験してきた素晴らしい守備を披露してきた。それは各メディアの報道でも明らかだろう。

 だがその一方で、6年ぶりに復帰した日本のプロ野球で川崎選手は新しいスタイルを築き上げようとしていた。実は今回の登録抹消は、その過程で起こった“負の遺産”なのだ。

 この5年間川崎選手はMLBでは、遊撃、二塁、三塁とどこでも守れる選手として認知されてきた。もちろん本人も出場機会を増やすため、遊撃に限らずいろいろなポジションを挑戦し続けた。残念ながらMLBで定位置を獲得することはできなかったが、それでもMLBで最後まで遊撃を任せられるという評価を得た日本人選手は自分が知る限り川崎選手しかいないし、守備に関してはMLBでも常に好評価を得てきた。

 そんな川崎選手が足首の痛みで登録を抹消された。関係者から聞いた話では、両アキレス腱に負担がかかったための痛みだということだ。これまで米国5年間で川崎選手がアキレス腱に不調を訴えて故障者リスト(DL)に入ったことは一度もない。あくまでMLBを長年取材してきた立場から考察すると、理由は至って単純だ。人工芝だ。

 川崎選手はこの5年間、メジャー、マイナーを通じて基本的に天然芝でプレーしてきた(もちろんブルージェイズでは人工芝でプレーしている)。そんな天然芝のグランドを中心にプレーの幅を広げてきた川崎選手が、人工芝で同じようなプレーをするのはかなりリスクがあったのだろう。それほど足腰への負担が違いすぎるのだ。

 現在MLBでは人工芝を本拠地球場するのはブルージェイズとレイズの2チームしかないし、ここ数年MLB選手の中には人工芝でプレーしたくないと表明し、両チームへの移籍を拒否する選手も少ないない状況だ。

 NPBがどう考えているかはわからないが、現在セ・パ両リーグの1位を走っているのは広島、楽天と、いずれも天然芝球場を本拠地としているチームだ。誰でも理解できると思うが、コンクリートの上に敷かれた人工芝と、土の上に敷かれた天然芝とでは、どかちからが選手によってプレーしやすい環境なのかは一目瞭然だろう。

 実はMLBで本拠地球場の“ボールパーク”化が推進されたのは、ファンが喜ぶ球場をつくるだけでなく、選手が思う存分プレーをできる環境を整備することにも繋がっていたからこそ、ほぼ全チームへと広がっていったのだ。

 日本球界をリードしてきたとされる某球団を含め、今も尚人工芝に固執している球団は本当に野球界の未来を考えているのだろうか。いささか疑問を拭いきれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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