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乱闘騒ぎで脳しんとうを起こした選手が引退危機に

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
この乱闘騒ぎで脳しんとうを起こしたマイケル・モース選手(右端)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 乱闘騒ぎが起こったのは5月29日のジャイアンツ対ナショナルズ戦の8回表のことだった。

 ハンター・ストリックランド投手が死球を与えた投球に怒り、ブライス・ハーパー選手が同投手めがけて突進していったことで、両ベンチから全選手が飛び出す大騒ぎとなってしまった。そこでジャイアンツの数選手がハーパー選手を止めに入ろうとしたのだが、悲劇的な“アクシデント”が起こった。

 同じようなタイミングでハーパー選手に向かっていったジェフ・サマージャ投手とマイケル・モース選手が接触してしまい、その際にサマージャ選手の頭部がモース選手のあごを強打してしまったのだ。モース選手は脳しんとうの症状を訴え、翌30日に故障者リスト(DL)入りを余儀なくされていた。

 このニュースは以下のツイートを見てもわかるように、地元メディアをはじめ全国的に報じられている。

 

 ジャイアンツの地元紙の1つ『The Mercury News』がモース選手の近況を報じたところでは、彼は現在も脳しんとうの症状が続いており、マイアミの自宅で療養している状態だという。

 同記事では、症状が治まってとしても試合勘が戻るまでマイナーリーグでリハビリが必要だとした上で、ブルース・ボウチー監督の「(引退するかどうかを)決断しなければならないだろう」との発言を紹介している。

 モース選手は2005年にMLBデビューを飾り、ここまで計6チームを渡り歩いてきた35歳のベテラン・ユーティリティ選手だ。身長196センチ、111キロという体格とその風貌から“The Beast(野獣)”というニックネームで親しまれていた。2009年から4年間ナショナルズにも在籍した経験があり、2012年には乱闘騒ぎを止めようとしたハーパー選手と一緒に外野を守っていたこともあった。

 野球とは直接関係のない乱闘騒ぎが原因で引退に追い込まれるとしたら、これほど悲しい出来事はない。奇跡の復活に期待したいところだが果たして…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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