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シーズン途中加入のオリックス・マレーロが活躍できる理由

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
試合前の練習中に中島宏之選手(左)と談笑するクリス・マレーロ選手

クリス・マレーロ選手の入団会見が行われたのが6月1日。そこから調整を兼ねてファームで2試合出場しただけで、9日の中日戦で1軍デビューを飾る慌ただしさだった。それでもその試合の第3打席で、本塁ベースの踏み忘れで“幻の1号”に終わったものの豪快な一発を放ち鮮烈デビューを飾った。

マレーロ選手の現在までの成績は、22試合に出場し打率.290、6本塁打、15打点。特に長打率は.609と期待通りの長打力を見せており、長村裕之球団本部長が入団会見で話していた「チームの打線に厚みを持たせ得点力アップに繋げる、打線強化を目指しての獲得」という目的に見事に合致した活躍を続ける。

つい最近、あるエージェントから聞かせてもらったのだが、シーズン途中で外国人選手を送り込む際はできうる限りNBP経験者の“元助っ人選手”を薦めるようにしているという。日本のプロ野球初体験の外国人選手が、ほとんど準備期間のない状態でチームが求める活躍をするのは相当に難しいからだ。それは過去の例からも多くの説明を必要としないだろう。

にも関わらず、マレーロ選手は瞬時に日本のプロ野球に適応している。その理由は何なのだろうか。

「日本の野球を気に入っているよ。ファンはとにかく試合に熱狂的だし、選手たちも毎試合ごとにしっかり準備をしている。今は置かれた状況を俯瞰しながら、日本でプレーする機会を与えてもらったことに感謝している。

実は自分の友人の多くが日本でプレーしてきた経験を持っていて、彼らから日本での慣習をある程度聞いていたんだ。それと自分が米国でやっていた試合前のルーティンが日本のやり方に近かったこともある。なので自分にとっては日本の野球は“まったく新しい”のものではなかったんだ。もちろん適応しなければならない部分もあるけど、来日する前からオープン・マインドで何でも受け入れる覚悟はしてきたからね。

(来日してからも)大きな変更はする必要は無かったし、“マイナー・アジャスト”(小さな変更)だけだった。それにチームのコーチやスタッフも素晴らしく、ちゃんとこちらの意見を聞いてくれ尊重してくれる」

マレーロ選手の説明からも理解できるように、マレーロ選手は日本のプロ野球に関するある程度の情報を入手し、その上で日本で挑戦する覚悟を持って海を渡ってきた。だからこそスムーズに順応することができたのだろう。練習中も通訳無しで選手たちと談笑するなど、すっかりチームに溶け込んでいる。

だからといって現在の成績に満足しているわけではない。野球選手としての向上心も相当に高い。

「まだ60打席(実際は70打席以上)しか立てていないけど、ある程度やれているのは嬉しい。でも100%満足しているわけではないし、常に成長できる部分があるものだ。

日本の投手は皆いい変化球を投げるし、どんどんストライクを投げてくる。すべてが米国の投手と同じとは思わないが、たくさんの頭脳的な投手が揃っている。毎試合堅実なアプローチが必要になってくる。

シーズン後半戦もいいプレーをしたい。どんどん試合に出場しながら、もっと日本の野球に適応していきたい。それと野球を楽しくことを忘れないようにしたい」

オールスター休み中は一緒に来日した恋人のデミさんと大阪や京都を観光する計画だというマレーロ選手。野球のみならずプライベートでも日本を満喫しようとする姿勢を見る限り、今後も彼のバットに期待できそうな予感いっぱいだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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