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今シーズンのイチロー選手の不振は指揮官の起用法に原因あり?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズンは極端に先発出場の機会が減っているマリナーズのイチロー選手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

今シーズンのイチロー選手の不振は紛れもない事実だ。これまで自身最低の打率(.229)に終わった2015年シーズンでさえ、同じ5月23日時点の打率は.290を残していた。ここまでどれだけ低空飛行を続けているかが解るだろう。

しかし過去のデータとしっかり向き合ってみると、マーリンズ3年目を迎えるイチロー選手が打撃不振のみならず、今シーズンは過去2年と比べて大きな違いがあることが窺い知れる。

それは先発出場機会の激減だ。2015年シーズンは5月までで25試合、2016年シーズンも同時期に16試合に先発出場しているのだが、今シーズンはここまでわずか5試合しか先発できていないのだ。

長年イチロー選手は先発フル出場を続けてきた選手で、常に実戦を積み重ね投手と対峙しながら打撃を作り上げてきたタイプだ。実はそれを過去のデータが見事に証明している。

MLB通算成績でみてみてると、先発出場した試合での通算打率は.314に対し、途中出場(代打を含む)では.245でしかない。もちろん全盛期だったマリナーズ時代は先発出場しかしかしていないので、途中出場の成績はある程度年齢を重ねた最近の成績でしかない。だがマーリンズで控え外野手に回った過去2年間先発出場と途中出場の打率を比較してみると…

2015:.235(先発89試合)/.197(途中出場64試合)

2016:.302(同62試合)/.253(同81試合)

となる。ちなみに先発出場が95試合しかなかった2014年のヤンキース在籍時は、逆に途中出場の打率(.400)が先発出場(.275)を上回っていたこともある。いずれにせよマーリンズでは、明らかに先発出場の方が成績が上回っている。

しかもだ。MLB通算の月間別打率をチェックしてみると、3、4月が最も低い.297であるのに対し、5月は最も高い.332を記録しているのだ。つまりイチロー選手は、開幕1ヶ月間ぐらいで実戦感を養いながら打撃を作り上げていき、5月に入り一気に爆発させる傾向にあるのが見て取れる。

確かに自己最低の打率に終わった2015年も、3、4月は.263だったが、5月に入り.310を記録している。しかしこの年は6月以降から再び低迷に入ってしまったわけだが、それでも先発機会に恵まれ、この年で唯一月間で100打席以上立つことができた8月は.270の打率を残しているのも忘れてはならない。

この傾向を考慮すれば、今シーズンここまで先発出場は5試合で、打席数も54に留まっている現状は、まだ2015年3,4月での打席数(62)にも達しておらず、従来通りのイチロー選手なりの実戦上での準備ができていないのではと危惧してしまう。

ただ2016年だけは例外だった。3、4月は33打席ながら.333と高い打率を記録し、逆に5月は同じく.316と高い打率を維持しているのだ。そしてこの年は、ドン・マッティングリー監督の就任1年目と重なってしまった。

ここまでの説明を聞いてどう感じてもらえただろうか。

もしマッティングリー監督がイチロー選手の過去の傾向を考慮せず、昨年の実績だけを元に『イチローは途中出場でも十分に打てる選手』と判断していたとしたら、開幕から続く不振を理由に逆に先発で起用することを躊躇するようになるだろう。しかし実際はこの指揮官の判断こそが、イチロー選手を“負のスパイラル”に貶めている原因になってしまうわけだ。あくまで推測の域でしかないとはいえ、イチロー選手の現状をかなり説明できていないだろうか。

先発外野陣が安定し、チームの成績も好調であるなら、イチロー選手に対する現在の起用法も理解できなくはない。だが実際はチームは地区最下位に低迷し、クリスチャン・イエリチ選手、ジャンカルロ・スタントン選手ともに本調子とはいえないプレーが続いているのが実情だ。

身体的能力は決して衰えていないイチロー選手を“第4の外野手”として有効活用することが、イチロー選手、チーム双方にとって不振脱出のカギになると感じているのは自分だけなのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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