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昨季王者のカブスがもたついているワケ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
戦前の予想に反してここまで厳しい戦いを強いられている昨季王者のカブス(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

5月10日時点でカブスの成績は17勝17敗で、ナ・リーグ中地区4位に留まっている。

シーズン開幕前の大方の予想では今年もワールドシリーズ制覇の最有力候補に挙げられ、チーム力を比較しても地区内では敵無しの状態で、開幕から独走態勢になると目されていた。今年もカブスを中心にキャンプ取材をしてきた自分自身も、その予想に何の疑いも持っていなかった。

実は4月下旬に地区1位に立った際このまま抜け出すのだろうと考えていたのだが、5月に入っても4勝6敗と一進一退が続き、独走態勢どころか地区内でも下位に甘んじている状態だ。

その原因を探るべく昨年と今年のデータを比較検討したところ、昨年から大幅に落ち込んでいる2つの要因があることが判明した。

まず1つが先発投手陣の不信だ。昨年の投手陣はチーム防御率(3・15)で両リーグ1位を誇った。なかでもジョン・レスター投手、ジェイク・アリエッタ投手、ジョン・ラッキー投手、カイル・ヘンドリックス投手の“先発4本柱”を擁した先発陣は防御率2・96と、両リーグ合わせて唯一2点台を記録する好成績を残し、リーグ4位の防御率(3・56)に終わったリリーフ陣をもカバーしていた。

今シーズンもここまでチーム全体の防御率が3・84でリーグ3位に留まっており、昨年と比較して極端に落ち込んでいるわけではない。しかしその理由は、リリーフ陣が奮起し同1位の防御率(2・86)を記録しているためで、頼みの先発陣は4・56と同8位に沈んでいる。今年は先発陣が崩れてしまうため、後手後手の戦いを強いられていることが垣間見られる。

そしてもう1つが打線の決定力不足だ。昨年のチーム打率は.256でリーグ6位、得点圏打率も.252の同10位だったものの、出塁率(.343)と残塁数(1217)は同1位で、得点(808)、打点(767)も同2位だった。つまり昨年は次から次へとチャンスを作り出し、そのいずれかを確実に得点に結びつけるという攻撃パターンを確立できていた。

だが今シーズンは昨年のようにチャンスを作れてないし、そのチャンスもなかなか得点につなげることができていない。チーム打率(.241でリーグ7位)、出塁率(.328で同5位)とともに昨年を下回っているにも関わらず、得点圏打率も.220と同14位に低迷しているのだ。どうしたって得点(166)、打点(155)ともに同7位タイに留まっているのも仕方がないところだろう。

これらのデータを見ても明らかなように、今シーズンのカブスは昨年のような試合運びができていない。シーズン前に最も不安視されていたリリーフ陣は上原浩治投手、ウェイド・デービス投手の加入ですっかり改善されたものの、盤石だと思われていた先発陣と攻撃陣がうまく機能していないとは皮肉なものだ。

果たして名将ジョー・マドン監督は、この2つの課題をどのように克服していくのだろうか。かなり興味津々で、今後の戦いぶりを注視していきたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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