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MLBの新貴公子が3年目シーズンで見据える更なる高み

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
まさに夢のような2シーズンを過ごしたカブスのクリス・ブライアント選手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

タイトルの「MLBの新貴公子」と聞いて、果たして読者の方々はどの選手を想像しただろうか。現在米国内で最も将来を嘱望され、さらにここまで最高のシーズンを過ごした男といえば、やはりカブスのブライアント選手になるのが衆目の一致するところだろう。

メジャー初昇格を果たした2015年は記者投票で満票を獲得し新人賞を受賞し、翌年はリーグMVP(記者30票中29の1位票を獲得)を受賞するともに、主力選手として108年ぶりのワールドシリーズ制覇に貢献。1995年からMLBを取材してきて、デビューからこんな輝かしい2シーズンを過ごした選手は他に見当たらない。

しかもオフには高校時代から付き合っていた恋人とゴールイン。更には、まだ年俸調整の権利にない選手としてメジャー史上最高額の105万ドルで契約するなど、公私ともにリア充の極みを突き進んでいる。まさに新貴公子に相応しい存在だということがわかってもらえるだろう。

だが25歳のブライアント選手は、もちろん未完成の選手だ。川崎宗則選手が「野球をやるために生まれてきた選手」と評するように、194センチ、104キロの恵まれた体格に加え、パワー、スピードを兼ね備えた身体能力、昨年まで投手、捕手、二塁以外すべてのポジションを守ってきた器用さ──等々果てしない才能は、どれ程の伸びしろがあるのか末恐ろしささえ感じてしまう。

その辺りを本人はどう考えているのだろうか。

「昨年は自分にとってもチームにとっても最高のシーズンだったのは間違いない。でも冷静に振り返れば、もっといいプレーができたと思っている。ディフェンスに関しては常に完ぺきを求めるべきだし、打撃もこの1年目以上に適応はできていたけど、もっと右翼方向に打つべきだったし、もっと相手投手に球数を投げさせる努力をすべきだったし改善点はたくさんあると思っている」

この自分を冷静にみつめる洞察力があるからこそ、首脳陣はまだ3シーズン目のブライアント選手に全幅の信頼を寄せている。マドン監督はキャンプ中も「とにかく怪我さえせずに調整してくれればいい」と完全に放任していた。シーズン開幕から3試合連続無安打とというスタートを切っていたが、たぶんメディアも含め誰も心配はしていなかっただろう。

「自分は常に個人的な目標を設定している。昨年もそれを達成することで自信にもなったし、自分へのモチベーションにもなってくれた。ファンから受ける期待感が高いのも大歓迎だし、自分は自分の可能性を信じているし、自分に対する期待はファンや両親以上だよ」

残念ながら今シーズンの具体的な目標は明かしてくれなたっが、ブライアント選手がまだまだ更なる高みを目指し果てしなく貪欲であることは間違いない。MLBを背負う日も遠くはないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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