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仏壇のロウソク・線香からの火災を防ぐには

吉川美津子葬儀・お墓・終活コンサルタント/社会福祉士・介護福祉士
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

1月末に、静岡県で住宅火災が発生し、隣接する建物3棟の一部が焼けたというニュースが流れた。「仏壇から火が出ている」という通報があったという。

令和元年中の出火件数3万7683件(令和2年、総務省消防庁発表)のうち、失火による火災は73.5%で、ロウソクなどの灯火による火災は427件で1.1%。全体の火災件数からみると、件数的にはさほど多くはないのだが、仏壇のロウソクを火種とする火災は毎年一定数発生している。

仏壇を出火元とする火災のニュースがあるたびに、「仏壇は危ない」という印象を持つ人も多いのだが、仏壇火災については出火原因を知っておくことで適切な対策を施すことができる。

例えば、枚方寝屋川消防組合本部(火災原因調査シリーズ92)では、ロウソクが燃え尽きた後に芯が飛び障子に燃え移った実験結果を紹介している。この実験では、ロウソク立てを洗った後に残った水が沸騰し、その圧力で火がついたまま芯が飛んで落下するケースがあるという結果が示された。つまりロウソク立てを水洗いした場合は、水分をよく拭き取っておくことが重要となる。

参考:

https://www.bousaihaku.com/wp/wp-content/uploads/2020/12/no135_57p.pdf

この他、仏壇の防炎・防火対策をするとしたら何に気をつけたら良いのだろうか。

防炎加工されたマットを使用

仏壇の荘厳や傷つき防止の点から購入する人も多い織物の敷物だが、これを防炎加工されたマットにすることで万が一、線香やロウソクを落としてしまっても、防炎マットの上であれば燃え広がりを抑えることができる。

防炎生地とは、生地そのものは燃えるが、火や炎を離せば自己消化性能によって燃え広がりを抑えることができる素材のこと。少し高価になるが、基布にグラスファイバーを使用した不燃生地のマットもある。

案外見落としがちなのが、仏壇前に置かれた座布団。仏壇前に置かれた座布団の上に火のついた線香が落下して火災になったケースもあるので、座布団も防炎素材にすることが望ましい。

周囲に燃えやすいものを置かない

仏壇の荘厳をする際には、近くに燃えやすいものはないか今一度確認を。例えば供物の下に敷く懐紙は火元の近くにないだろうか。仏壇の造花や神棚の榊も防炎加工されていないものがほとんどなので要注意だ。

経本、過去帳、神棚の御札も火元から離れた場所に置くようにしたい。

短いロウソクにする

仏壇のロウソクは、お参りをする際に火を灯し、終わったらその都度消すことを習慣化することで、消し忘れを防止することができる。そうはいっても、灯したままその場を離れてしまうことがないとはいえない。燃焼時間が5~10分程度の短寸ロウソクにすることで、消し忘れても燃え続けるリスクを回避することができる。

5分から10分程度の短寸ローソクが売れている。

倒れにくい仏具にする

東京消防庁の調査データ(令和2年版:火災の実態)によると、灯火による火災の場合、火源が倒れて火災になる率が23.8%と最も高い。そのためロウソク立ては重心が低く倒れにくいものに替えるという方法もある。受け皿は大きくロウソクが倒れてもロウが受け皿から落ちにくい物がおすすめだ。火立の針の部分だけロウソクの大きさに合ったものに変更できる仏具もある。

ロウソク立ては重心が低く、受け皿が大きめのものを。防炎マットと組み合わせて使用したい。協力:想いの時

火を使わないロウソク・線香にする

ロウソクの灯、線香の煙や香り、生花、それぞれ意味があり、それぞれ仏教では欠かせないお供え三種とされている。そのため「偽物は好ましくない」「偽物ではそもそも本来の意味から外れてしまう」という意見もあるが、子供や高齢者、ペットがいる家庭など火を使うことに抵抗がある場合は、安全に暮らすという視点から代用品、例えばLEDロウソクや線香等に頼ることもやむを得ないのではないかという声が大きくなっている。

LED線香の中には、本物の線香のような香りや煙のようなミストを発生させるものも発売されている。

仏壇の中に手を伸ばす場合は、必ず火が消えていることを確認してから作業するという点も大切だ。仏壇手前のロウソクの火からシャツの袖に着火するケースもある。京都市消防局によると、万が一、着衣に着火した場合は水で消火するか、近くに水がない場合は、その場で転がって消火するのが良いという。慌てて走り回ると風を送ってしまい炎が大きくなる恐れがあるので要注意。あわせて仏壇そのものの転倒対策も行っておきたい。

葬儀・お墓・終活コンサルタント/社会福祉士・介護福祉士

きっかわみつこ。約25年前より死の周辺や人生のエンディング関連の仕事に携わる。葬祭業者、仏壇墓石業者勤務を経て独立。終活&葬儀ビジネス研究所主宰。駿台トラベル&ホテル専門学校葬祭ビジネス学科運営、上智社会福祉専門学校介護福祉科非常勤講師などを歴任。終活・葬儀・お墓のコンサルティングや講演・セミナー等を行いながら、現役で福祉職としても従事。生と死の制度の隙間、業界の狭間を埋めていきたいと模索中。著書は「葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」「お墓の大問題」「死後離婚」など。生き方、逝き方、活き方をテーマに現場目線を大切にした終活・葬儀情報を発信。メディア出演実績500本以上あり

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