アメリカのTV局で実際にあったセクハラ裁判をほぼ実名で映画化。3大女優競演の『スキャンダル』

 2016年、全米のニュース放送局で視聴率ナンバー1を誇るFOXニュースで起きた衝撃のスキャンダルを映画化した実話。

 元ミス・アメリカで、かつてはFOXニュースの人気キャスターだったグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、同社のCEOでTV業界の帝王として君臨していたロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクシャルハラスメントで告訴するという事件が発生。彼女は彼に強要された性的関係を拒んだために降格され、ついには解雇されたと訴えたのです。世間が騒然とする中、現在のトップ・キャスターであるメーガン・ケリー(製作も兼任し、本作でアカデミー主演女優賞候補になったシャーリーズ・セロン)は、自身のキャリアをふり返り、複雑な想いを抱えていました。そんなメーガンは、上昇志向が強く、人気キャスターを目指してロジャーに接近しているケイラ(本作でアカデミー助演女優賞候補になったマーゴット・ロビー)が何かを隠していることに気がつきます…。

 こうした映画を観るにつけて、ハリウッド映画の懐の深さを感じざるを得ません。つい先日の出来事を映画化し、登場人物はそのほとんどが実名で描かれているのですから(マーゴットが演じたケイラのみ、複数の女性のエピソードを集めて描かれています)。日本ではまず考えられないプロジェクトです。それも当事者であるロジャー・エイルズが17年に死去し、一方のグレッチェンがFOXニュースと和解した際に(和解金は20億円以上だと言われています)、過去の事件については一切語らないという契約をかわしたため、誰も反論できないという状況ゆえなのでしょうが。

 いかにも製作者としてのシャーリーズが選びそうな題材で、男性優位社会の中にあって、“男たちのルール”に従って生きていくことを余儀なくされていた女性たちが、そんな世の中に「NO!」を叩きつけていく姿を力強く描いていきます(脚本は例の“#Me Too運動”以前に書かれていたものだとか)。

 また本作はアカデミー賞でメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞。カズ・ヒロ(米国市民権を得たので、辻一弘から改名)による特殊メイクは素晴らしく、映画が始まってしばらくたっても「あれ? シャーリーズはいつ出てくるのだろう…」と思わされてしまったほど、彼女は実物のメーガン・ケリーそっくりの顔で登場します。でっぷりと太ったジョン・リスゴーの成りきりぶりもお見事。メディア王ルパート・マードック役で『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウエルが顔を見せています。

(『スキャンダル』は2月21日から公開中)

配給:ギャガ

(c) Lions Gate Entertainment Inc.