一人のダウン症の青年の夢が、映画と現実の両方で花開いた『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

「映画スターになりたい!」

あるキャンプに参加したマイケル・シュワルツとタイラー・ニルソン(本作の共同監督&脚本)に、一人のダウン症の青年が声をかけたのがすべての始まりでした。「それは無理」と即答したシュワルツでしたが、青年はあきらめませんでした。「だったら、君たちが僕のために映画を作ってくれよ」その前向きなキャラクターに魅力を感じた二人は、彼のために脚本を書き上げます。まだCMや短編映画しか経験のない無名の新人が書いた脚本は、『リトル・ミス・サンシャイン』などの製作者の目にとまり、『トランスフォーマー』のシャイア・ラブーフ、『サスペリア』のダコタ・ジョンソン、『帰郷』のブルース・ダーン、『サイドウェイ』のトーマス・ヘイデン・チャーチ、『フォードvsフェラーリ』のジョン・バーンサルといったそうそうたる俳優たちが参加することに。そして主人公の一人であるザックを演じたのが、最初の一言を発した青年ザック・ゴッツァーゲンなのでした。

 この映画の成り立ち自体、かなり素敵なエピソードです。そして完成した映画はサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で監督賞を受賞。映画批評サイトでも高評価を得て、全米17館から始まった興行では、6週目には1490館にまで拡大する大ヒットになりました。

 ジョージア州。養護施設に入れられていたダウン症のザック(ゴッツァーゲン)は、子供のころからあこがれていたプロレスラーの養成学校に入ることを夢見て施設を脱走します。同じころ、最愛の兄(バーンサル)を亡くして以来ツキに見放され、生きる方向性を見失っていた漁師のタイラー(ラブーフ)は、地元で事件を起こして船で逃げ出すハメになってしまいます。偶然、その船の上でザックが眠っていたことから二人は出会い、タイラーはザックの夢を叶えるため彼に同行することに。この旅に、ザックを追ってきた施設の看護師エレノア(ダコタ)も成り行きから加わっていきます。

 豊かな自然の中で繰り広げられるロードムービー。ゴッツァーゲンの全身をフルに使っての感情表現が豊かで、彼の一挙手一投足から目が離せなくなります。監督たちが彼に魅力を見出し、応援したくなったのも理解できるのです。キャラクターに“ザック”と“タイラー”という、自分たちと同じ名前を付けたのも、その表れなのでしょう。

 夢に向かってひたむきに進むことのすばらしさを感じさせてくれるさわやかな映画。映画の中のザックがレスラーになる夢を叶えたように、ゴッツァーゲン自身も映画に主演するという夢を実現したのですから。

 ちなみに、タイトルの『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』とは、ザックがタイラーと一緒に決めた、彼のリングネームです。

(『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』は2月7日から公開中)

配給:イオンエンターテインメント

(c) 2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.