絶対王者フェラーリに挑んだ男たちの実話。しかし本当の敵は身内にいた!『フォードvsフェラーリ』

 マット・デーモンとクリスチャン・ベールが初共演でダブル主演をつとめた映画。1960年代のモータースポーツ界の実話に基づいた作品です。

 キャロル・シェルビー(デーモン)はアメリカ人レーサーとして初のル・マン24時間耐久レース優勝という快挙を達成しますが、心臓病のため引退を余儀なくされ、カー・デザイナーに転身します。そんな彼にとんでもない依頼が舞い込みました。アメリカの大衆車メーカーで、レース参戦経験のまったくないフォードのレーシング・チームを率いて、ル・マンの絶対王者であるフェラーリに勝てというのです。若者に車を売るためにレース界への参入を計画し、フェラーリの買収を目論んでいたフォードでしたが、失敗。その際のフェラーリ創業者エンツォ・フェラーリの傲慢な態度に腹を立てたヘンリー・フォード二世が、“打倒フェラーリ”を命じていたのでした。

 次のル・マンまでの準備期間はたったの90日。そんな不可能にも思える状況下でシェルビーがレーサーとして白羽の矢を立てたのは、凄腕のイギリス人ドライバー、ケン・マイルズ(ベール)でした。しかし、妥協という言葉を知らない破天荒な性格のマイルズは、次々とトラブルを引き起こしてしまいます…。

 タイトルの『フォードvsフェラーリ』から、両者のライバル関係を描いた映画のように思われますが、実際はフェラーリ側の視点はほとんど描かれていません。むしろ敵はフォードの内部にいます。フォードのレーシング部門の責任者になった副社長のレオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)は傍若無人な態度のマイルズを嫌い、彼をチームから外そうとしたり、シェルビーには次々と無理難題を押し付けてきたりするのです。大企業の論理を盾に取って、現場を圧迫していくその姿は、さながら池井戸潤あたりが描く企業ドラマにも通じるものがあります。

 そんな中で、シェルビーとマイルズの信頼関係とアツい友情が描かれているのが見どころ。商売のためならかつての名声も積極的に利用する現実的なシェルビーと、自分を曲げることができない頑固で不器用なマイルズは水と油のようにまったく違った性格。しかし二人は共通の目的に向かって絆を強めていくのです。

 監督は『LOGAN/ローガン』のジェームズ・マンゴールド。おもなレース・シーンは3回登場しますが、すべて演出方法を変え、スリリングな見せ場を作り上げています。特にクライマックスのル・マン24時間耐久レースは、当時の会場を完璧に再現し、あらゆる撮影テクニックを駆使して描かれます。30分以上も車がただ走っているだけなのに、まったく退屈することなく観られるのは、監督の力量を表しているのでしょう。レースの臨場感にひたれる映画なので、大音量・大画面で楽しみたい作品です。

(付記)

この作品から20世紀フォックス映画製作の作品の配給はディズニーになります。そこには一抹の寂しさも…。

(『フォードvsフェラーリ』は1月10日から公開)

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation