夢のスーパーカーを作った男が巻き込まれた、嘘のような本当の事件を描く『ジョン・デロリアン』

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでタイムマシンとして使用されたことで有名になったスーパーカー、デロリアン(DMC-12)。それを作ったのは、自らの名前をこの夢の車に冠した男でした。ジョン・ザッカリー・デロリアン。斬新なアイディアで60年代のアメリカ自動車産業を席捲し、史上最年少で大手自動車メーカーGMの副社長にまで上り詰めた男。しかし、彼の順風満帆に見えた人生は、夢の結晶であるデロリアンの発売後わずか3年半で、自ら立ち上げた自動車メーカーの倒産という形で幕を閉じてしまいます。その裏に何があったのか? 

 邦題の『ジョン・デロリアン』からはデロリアンの一代記を想像しますが(原題は『DRIVEN』)、本作は彼の凋落の裏側で起きていた「嘘のような本当の話」を描いた実録もの。主人公はリー・ペイス(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のロナン役が有名)扮するデロリアンよりも、むしろジェイソン・サダイキスが演じたパイロットのジム・ホフマンと言えます。

 1977年、カリフォルニア。ドラッグの運び屋を副業にしていたホフマンはFBIの摘発を受けます。しかし捜査官のベネディクト(コーリー・ストール)は彼をすぐには逮捕せず、大物麻薬ディーラーを釣り上げるための情報提供者として利用しようと考えます。その代償としてサンディエゴ郊外の邸宅を与えられたホフマン一家。その隣の豪邸の持主がジョン・デロリアンだったのです。

ホフマン(J・サダイキス)とデロリアン(L・ペイス)
ホフマン(J・サダイキス)とデロリアン(L・ペイス)

 有名人と知り合いになれたことで有頂天になるホフマン。長身でハンサム、美しい妻と華やかな日々を送り、自分の夢を熱く語るカリスマ的存在のデロリアンは、彼にないものすべてを持っている憧れの対象なのでした。

 しかし、一方でFBIから依頼されたスパイの仕事はまったくうまく進まず、その場しのぎの言い訳でごまかすことの連続で次第に窮地に陥っていきます。やがてデロリアンが販売の不振から資金繰りに苦しんでいることを知ったホフマンは、デロリアンをFBIがターゲットにしている麻薬ディーラーに紹介し、コカイン取引に巻き込むというとんでもないことを思いついてしまうのでした。デロリアンに対する羨望は、いつの間にか嫉妬に置き換わっていたのです…。

 見栄っ張りで小心者、保身しか考えていない自分勝手なホフマンは、客観的に見て最低の人間です。しかし、デロリアンもまた完璧な人間ではありません。そんな二人が出会ってしまったことによって、この人間のエゴ丸出しのブラックなコメディが幕を開けるのです。191センチの長身を活かしたペイスは、颯爽としたカリスマ経営者として登場しながら、次第にその裏に隠された人間的なもろさを浮き彫りにしていきます。『なんちゃって家族』などのコメディ畑で活躍しているサダイキスの方も、このなんとも小物感にあふれた情けない男を見事に演じきっています。

 実際にDMC-12は故障が多く、8000台製造したものの3000台しか売れなかったそうなので、遅かれ早かれ経営破綻に追い込まれたのでしょうが、ホフマンと出会っていなければこんな末路にはならなかったはずですから、人の運命について考えさせられる一本です。

(『ジョン・デロリアン』は12月7日から公開)

配給:ツイン

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