97年、韓国経済は破綻の危機に。その裏で何が起きていたのか?『国家が破産する日』

常に国民のことを考えるシヒョン(キム・ヘス、中央)だが…

 1997年、韓国は通貨危機に陥り、国家の破産という絶体絶命の状況に追い込まれていました。その時、国民を守るべき政府は何をしていたのか? 自国の暗部を追及する社会派映画。登場するキャラクターは架空のものですが、「当時、非公開で運営されていた対策チームがあった」という事実に基づき、経済危機の前後の状況は正確に再現されています。

 前年にOECD(経済協力開発機構)に加盟して先進国の仲間入りを果たし、右肩上がりの経済成長と好景気にわく97年の韓国。11月15日、韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョン(キム・ヘス)が10日前に提出した通貨危機に関するレポートがようやく総裁の目にとまります。しかしこの時、国家破産まで残された時間は7日間しかありませんでした。対策チームが急遽招集されますが、「国民に危機を知らせるべきだ」というシヒョンの意見は、財政局次官や経済首席によって無視されてしまいます。

 同じ頃、政府が隠しているこの状況を独自に察知した経営コンサルタントのジョンハク(ユ・アイン)は勤務先のノンバンクを辞めて独立、投資家を集めて一世一代の大勝負に出ます。一方で、経済情勢に疎い町工場の経営者ガプス(ホ・ジュノ)は大手百貨店からの大量注文に喜び、現金取引の原則を曲げて手形決済に応じてしまいました。

国家の破綻を利用して稼ごうとする経営コンサルタントのジョンハク(ユ・アイン)
国家の破綻を利用して稼ごうとする経営コンサルタントのジョンハク(ユ・アイン)

 事態は日に日に悪化し、不渡りを出す会社や自殺者も続出。政府はIMF(国際通貨基金)に支援を求める決定をしますが、それはIMFが国の経済全般に介入し主導権を握る可能性も含んでいました。シヒョンは公式会議の席でIMFの代表に対し論戦を挑むのですが…。

 国民に対する情報操作や欺瞞によって追いつめられていく庶民。国家が危機に陥ったことを逆手にとって成功した者が持つ微妙な感情。責任をとるべき立場にありながら、何の痛手も被らずしたたかに生き延びている政府高官。「国際通貨システムの安定維持」という設立目的を忘れ、アメリカ財務省と組んで韓国経済を牛耳ろうとするIMF専務理事(フランス俳優ヴァンサン・カッセルが冷酷非情な役柄にハマっています)など、さまざまな人々のそれぞれの思惑での行動を描く群像劇。

 支援の条件として厳しい要求を突き付けてくるIMFとの交渉の様子は映画では初めて明らかになったもので、当時の記録や実際の経験者へのインタビュー取材などによって再現されたもの。国家や国民のために孤軍奮闘するキム・ヘス扮するシヒョン役が主役的な描かれ方をしていますが、彼女には具体的なモデルがいるわけではなく、脚本家のオム・ソンミンによれば「もしもあの時、こんな人がいてくれたらどれほど良かっただろうか」という願望を形にしたものだそうです。

 事実の隠蔽や情報操作はわが国でも問題になっていることでもあり、「危機に陥った時、どう動くのか?」は決して他国の過去の話とばかり言っていられない共通のテーマなのです。

(『国家が破産する日』は11月8日から公開)

配給:ツイン

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