イザベル・ユペールがまたもや強烈キャラに。ささやかな善意が恐怖を呼び込む『グレタ GRETA』

 日本では『スマホを落としただけなのに』という映画がありましたが、この『グレタ GRETA』はさしずめ“バッグを拾っただけなのに”。ささやかな善意が恐るべき事態にヒロインを巻き込んでいきます。

 ニューヨークの高級レストランでウェイトレスとして働くフランシス(クロエ・グレース・モレッツ)は帰宅中の地下鉄の座席に誰かが置き忘れたバッグを見つけます。駅の遺失物窓口が閉まっていたため、彼女は中に入っていたIDカードを頼りに直接届けることに。バッグの持主はグレタ(イザベル・ユペール)という未亡人。夫を早くに亡くし、娘は遠いパリにいて孤独だというグレタに同情したフランシスは、彼女のもとをたびたび訪れるようになります。ちょうど母を亡くして間もないフランシスにとって、それは心地いい体験でした。しかしある日、彼女はグレタの家で自分が拾ったのと同じバッグが何個も並び、それぞれに女性の名前が書かれたメモが入っているのを見つけてしまいます。

 ルームメイトのエリカ(マイカ・モンロー)の勧めもありグレタから距離をとろうと決意したフランシス。しかしグレタは彼女の勤務先や自宅に押しかけてきたりして、次第に異常行為を過激化させていきます。そしてついには…。

『クライング・ゲーム』のニール・ジョーダン監督によるサイコ・サスペンス。平穏な日常が一人の女性の存在によって次第に崩壊していく様子を緊迫感あふれる映像で描いています。なんといってもグレタの役にイザベル・ユペールを起用したのが成功の要因。一見、上品で優し気な女性でありながら、その中に狂気を秘め、静かな表情から一転してそれを爆発させる。この変貌ぶりでフランシスのみならず観客をも戦慄させてくれるのです。近年『エル ELLE』や『エヴァ』など強烈な役柄が多いユペールですが、今回のグレタもなかなかのもの。物語の進行につれて次第に明らかになるそのサイコパスぶりをお楽しみに。

 音楽では何度も奏でられるリストの「愛の夢」が効果的に使われています。かつて『ピアニスト』に主演したユペール自らが演奏し、不穏な雰囲気を増幅させているのです。

(『グレタ GRETA』は11月8日から公開)

配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

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