最新映像技術が可能にした、現在のウィル・スミスと若き日のウィル・スミスの対決『ジェミニマン』

 最新の映像テクノロジーはここまで来たのか、を実感させてくれる映画です。

これまでにもジャン=クロード・ヴァン・ダムの『ダブル・インパクト』やジャッキー・チェンの『ツイン・ドラゴン』など、スターが一人二役を演じて同じ画面に登場した映画はありましたが、いずれも双子の役。ところが、本作『ジェミニマン』の売りである「ウィル・スミスvsウィル・スミス」は、“現在の”ウィル・スミスと“若き日の”ウィル・スミスが対決するところにあります。今までの映画ならば、そっくりさんや血縁者(息子など)に若い頃を演じさせたのでしょうが、本作で若き日のウィル・スミスを演じているのは、なんと本人。

 ストーリーはジェリー・ブラッカイマー製作作品だけに単純明快。凄腕のスナイパーとして政府の汚れ仕事を請け負ってきたヘンリーは、自らの腕の衰えを感じ引退を決意します。そんな時、ミッションの最中に何者かの襲撃を受けました。神出鬼没の暗殺者は、彼の考えを読むかのように先回りし、攻撃を仕掛けてきます。それもそのはず、敵は彼自身。23歳の若き日の彼の姿をしたクローンだったのです。あとは両者の駆け引きと戦闘が連続。ヘンリーの技術と経験か、若さと体力に優れたクローンか。勝つのはどちらだ? やがて謎の組織「ジェミニ」の存在が浮かび上がっていきます。

 現在のヘンリーはもちろん今のウィル・スミスですが、クローンの方がデビュー当時の彼にしか見えないのが本当にすごいです。もちろんメイクアップとデジタル処理によって作り上げられたものですが、世代の違う同一人物を演じ分けたスミスの演技力にも注目です。「遺伝子は同じでも育った環境が違う」ことを意識し、戦闘スタイルもきっちり分けてそれぞれのキャラを立てることに成功しているのです。

 そしてアクションシーンの迫力にも目を見張ります。台湾時代は『ウェディング・バンケット』や『恋人たちの食卓』など、人情の機微を繊細に描く作品が多かったアン・リー監督ですが、ド派手な『グリーン・デスティニー』以後はハリウッドに進出しVFXを多用した作品も手がけるようになりました。代表格はアメコミ映画『ハルク』(変身後のハルクのモーションキャプチャーも自ら演じている)や全編のほとんどがCGという『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(アカデミー監督賞受賞)。常に新技術に着目する彼が本作で挑んだのが3DHFR(ハイ・フレーム・レート)という撮影技法。毎秒120フレームという、これまでの映画の2・5倍のフレーム数で撮影され、デジタル画像はさらにクリアになりました。映画を観ているというよりは、「目の前で起きていることを目撃している」感覚で映像の中に引き込まれていくのです。バイク・チェイスの場面や銃撃シーンの臨場感はすさまじいものがあります。これは、ぜひとも劇場の大画面で体感してほしい映画なのです。

 

(『ジェミニマン』は10月25日から公開中)

配給:東和ピクチャーズ

(c)2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.