妻を殺され、自らは全身麻痺になった男が最新鋭AIを埋め込まれ、復讐を開始する『アップグレード』

 ジェイソン・ブラムというプロデューサーが優れている点は、よくできた脚本を見つけると(最近は売れっ子なので持ち込まれるケースが多いと思うけれども)、スター・バリューにこだわらず(要はあまり製作費をかけることなく)、着実に高い利益を上げていることです。そうして彼は『パラノーマル・アクティビティ』や『インシディアス』『パージ』といった人気シリーズを世に送り出してきました。本作『アップグレード』の監督・脚本は、あの『ソウ』の脚本を書いたリー・ワネル。この二人が組んだのですから、今回もさまざまな仕掛けに満ちた脚本で楽しませてくれます。

 舞台は近未来。自動車は完全自動運転の電動車が主流の時代にあって、ガソリン駆動の旧車のレストアを仕事にしている主人公のグレイ(ローガン・マーシャル・グリーン)は、仕事の帰りに謎の一団に襲撃され、妻のアシャ(メラニー・バレイヨ)を殺された上に自身も脊髄に損傷を受け、全身麻痺の体にされてしまいます。そんな彼に、巨大IT産業のトップ(ハリソン・ギルバートソン)が声をかけてきます。「最新鋭AIの人体実験に協力してくれないか? 成功したら今まで同様の行動の自由を取り戻せるだろう」

 もちろんグレイは快諾。STEMと呼ばれるAIを体に埋め込む手術は無事成功し、グレイは普通に歩けるようになります。しかもSTEMとは意思の疎通が可能であり、その解析能力によって自分と妻を襲った相手を突き止めることができたのです。さらに、STEMに動作を委ねることによって人間離れした身体能力をも得ることに。こうしてグレイの復讐劇が幕を開けます。

 と、ここまでの序盤のストーリーから“よくあるリベンジ・アクション”を想像する人も多いでしょうが、さすがはリー・ワネル。物語は二転三転し、思わぬ方向に向かって走り出していくのです。普通ならAIの力を借りたグレイが無双するところですが、敵の集団が機械を体に埋め込まれた改造軍人ぞろいでかなりの強敵だったり、STEMが外部からシャットアウトされそうになって体が動かなくなるピンチに陥ったりと、まったく先の読めない展開が続きます。グレイに疑いを抱いたコルテス刑事(ブラムが製作した『ゲット・アウト』での家政婦役が印象的だったベッティ・ガブリエル)の追及の手も迫って、いつバレてしまうかというサスペンスも(AIのことは極秘なので、グレイは普段は車椅子で行動している)。事件の真相解明に関する部分はどんでん返しの連続でサプライズがいっぱい。しかし冷静に考えればちゃんと伏線が張ってあったという巧妙な脚本に唸らされました。“AIが体を動かしている”という設定の、普通ではありえない動きを見せるアクション・シーンも異彩を放つSFサスペンス。一昔前のSF映画好きなら楽しめること請け合いです。

(『アップグレード』は10月11日から公開)

配給:パルコ

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