少女たちの危険な友情は、やがて陰惨な殺人劇に…。心理サスペンス『サラブレッド』

リリー(アニヤ・テイラー・ジョイ)とアマンダ(オリヴィア・クック)

 主人公は対照的な性格の二人のティーンの女性。アマンダ(オリヴィア・クック)は鋭い洞察力の持主ですが、毒舌家で、ある事情があって世間からのけ者にされています。リリー(アニヤ・テイラー・ジョイ)は名門校に通う洗練された上流階級の令嬢。しかし実際にはいくつもの嘘をついていて、感情的な性格のため、自らの激情を抑えることができないのもしばしば。

 そんな幼馴染みの二人が、久々に再会するところから物語は始まります。リリーの母は最近再婚したばかりで、その義父はリリーに対して常に高圧的な態度をとり、彼女は憎しみをつのらせていきます。アマンダとリリーは義父に対する殺人計画を立てることで友情を深めていきますが、次第にそれは空想を越えた危険なものに…。

 監督・脚本はこれがデビュー作となるコリー・フィンリー。もともと劇作家・演出家として活躍していた人だけあって、本作も当初は舞台劇として構想されたもの。会話劇が主で、派手なアクション・シーンはありません。アマンダは愛馬を安楽死させようとして失敗、逆に残酷な殺し方をしてしまったために動物虐待の疑いをかけられた、という過去があるのですが、そうした(タイトルの由来にもなる)ドラマティックなシーンすら、セリフの中で処理されるだけ。また、いくつかの重要な場面もカメラで映し出されていない場所で進行しているという、きわめて舞台劇的な作りになっています。

 したがって、主人公二人の表情の演技に映画の出来がかかってくるわけで、この二人をキャスティングできたことは成功だったと言えるでしょう。『レディ・プレイヤー1』で注目されたオリヴィア・クックは、無表情で無感動なアマンダになりきっていますし、一方のアニヤ・テイラー・ジョイ(『スプリット』『ミスター・ガラス』)は感情の起伏が激しく、時に狂気もにじませるリリーを熱演しているのです。彼女たちの本心はどこにあるのか? 二人の意味深な会話と表情の微妙な変化が映画を引っ張っていきます。

 演出も、やたらと広い豪邸の空虚な空間を活かし、不安定なカメラワークや不安をかきたてる音楽などで、観客の心をざわめかせていきます。舞台劇ではなく映画にしたのは、こうした効果のためでしょう。

 さて、二人の少女は、自分たちだけでは完全犯罪ができないと考え、ドラッグディーラーの青年ティムを仲間に引き込もうとしますが、そのティムを演じているのがアントン・イェルチン。『スター・トレック』や『グリーンルーム』で知られるこの若手演技派俳優は、ご存知の通り2016年6月に自宅で起きた不幸な事故によって若くしてこの世を去ってしまいました。この映画は彼の遺作になります。ダークな物語にユーモアの味付けを加えてくれた彼の演技を見ていると、早すぎた死を惜しむ気持ちが止められなくなるのです。

(『サラブレッド』は9月27日から公開中)

配給:パルコ

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