イタリアの独裁者ムッソリーニが現代に復活して人気者に…『帰ってきたムッソリーニ』

 1945年4月28日に殺害されたイタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニ(マッシモ・ポポリツィオ)。しかし、それから70年以上が経過した現代の同日、ローマの街角に、あの軍服姿で彼は突然空から降ってきます。偶然その姿を目にした売れない映像作家カナレッティ(フランク・マターノ)は、彼をムッソリーニのコスプレをした俳優だと思い込み、彼を題材にしたドキュメンタリーを製作し、人生の大逆転劇を思い立ちます。さっそくイタリア全土を旅しながら、一般市民と触れ合うムッソリーニの様子を撮影して動画サイトに投稿。やがてその映像は評判を呼び、ムッソリーニはテレビ番組のレギュラーまで持つ人気者になり、カナレッティもテレビ局の仕事を得ます。しかし、やがて事態はカナレッティの思惑をはるかに超え、ムッソリーニは再びイタリアを支配しようという野望を抱いていくのでした…。

 ここまでのあらすじを見て「あれ?」と思った方も多いことでしょう。それもそのはずで、この映画『帰ってきたムッソリーニ』は、16年に日本公開されて話題となった『帰ってきたヒトラー』と同じ原作小説にインスパイアされ、舞台をイタリアに変えて映画化されたものなのです。したがって、基本的なストーリーラインは同じ。しかし、ドイツとイタリアの国民性の違いのせいか、雰囲気はかなり変わっています。そのあたりがこの映画のお楽しみ。

 ヒトラーがあくまでも“あの頃のヒトラー”のままで現代に復活したのに対し、ムッソリーニははるかに柔軟な思考を見せます。なにしろスマホまで使いこなし、カナレッティのために恋愛指南まで行なう余裕を見せるのですから。カリスマ的な魅力だけでなく人間味も感じさせるムッソリーニはかなりの男前。危険な思想の持主でありながらも、その発言には正論も多く、ついつい共感させられそうになるのが、恐ろしい部分でもあります。

 市民の中にムッソリーニが入りこみ、社会に対する不満点を尋ねていくシーンは、すべてドキュメンタリーとして撮影されたもの。そこでの市民の発言がいかにもイタリア的で、笑わせてくれます。ちなみに一般の人を映画に出演させるには承諾のサインが必要なため、それができなかった人たちの顔にはモザイクがかけられているのだとか。

 混沌とした、政治不信の社会にあっては、カリスマ的独裁者が求められるのか? ドキュメンタリー部分を見ていると、そうした危惧を感じずにはいられません。同時に、視聴率さえ取れれば内容はどうでもいいというマスメディアに対する皮肉も含まれています。イタリア・オペラの陽気なメロディーにのって展開するコミカルなお話ですが、その背後にあるブラックな味付けがこの映画の魅力なのです。

(『帰ってきたムッソリーニ』は9月20日から公開)

配給:ファインフィルムズ

(c)2017 INDIANA PRODUCTION S.P.A., 3 MARYS ENTERTAINMENT S.R.L.

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