天使のような美貌を持った17歳の連続殺人犯を描いた実話『永遠に僕のもの』

 1971年、アルゼンチンのブエノスアイレスに実在した犯罪者の物語。17歳のカルリートス(ロレンソ・フェロ)は、天使のような美貌を持ちながらも、呼吸をするように嘘をつき、他人のものを盗むことに何の罪悪感も抱かない危険な存在でした。真面目で善良な両親は、そんな彼を心配して、新しい環境でやり直しさせようと転校させますが、そこで待っていたのは野性的な魅力を持つラモン(チノ・ダリン)という若者との出会い。やがてカルリートスは、ラモンの気を引くために犯罪を持ちかけ、裏社会に生きるラモンの父親の“稼業”を手伝うことになります。

ラモン(チノ・ダリン)とカルリートス(ロレンソ・フェロ)
ラモン(チノ・ダリン)とカルリートス(ロレンソ・フェロ)

 その行動原理が“楽しければ、何でもいい”というカルリートスは、いわゆる悪のルールにも縛られることはありません。スリルを求めてあえて危険の中に飛び込む彼は、邪魔になる者を躊躇なく殺害するようになり、その行為は次第にエスカレートしていくのです。ラモンもそんな彼に付いていけないものを感じていくのですが、さらにカルリートスは思いもよらぬ事件を起こしてしまいます。

 カルリートスが次にどんな行為に出るのかは、登場人物ばかりではなく観客にも予測不可能。ドキドキしながら彼の動きを見守るしかありません。そういう意味ではきわめてスリリングな映画。この人物造形は監督のルイス・オルテガによるもので、実在の殺人鬼で「黒い天使」と呼ばれたカルロス・ロベルト・ブッチにインスパイアされながらも、映画独自のキャラクターを作り上げています。製作はペドロ・アルモドバル。

 主人公カルリートスを演じるロレンソ・フェロは1000人を超えるオーディションで発掘された新星で、若干の子役経験はあるものの、本格的な演技はこれが初めてのこと。あどけない微笑みを浮かべながら、自然かつ優雅に犯罪行為を行なう不可思議な存在を体現しています。この映画のヒットで本国では人気者になり、ハバナ映画祭では主演男優賞を受賞。ラッパーとしても活躍を始めたそうです。

 ブロンドのふわふわヘアで美しい顔立ちの“可愛い系”カルリートスと、黒髪で荒々しい雰囲気の“カッコいい系”ラモンの対比ももうひとつの魅力。BL的要素も多分に含まれているので、「どちらがタイプか」といった話題も盛り上がるに違いありません。

 ラスト近くでカルリートスが流す涙の意味など、観終わった後でいろいろ考えさせてくれる作品です。

(『永遠に僕のもの』は8月16日から公開)

配給:ギャガ

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